自衛隊輸送力のカギ “PFI船舶” がアップデート! 「ナッチャンWorld」→「ナッチャンNEO」で何が変わる?

自衛隊の海外派遣や大規模輸送を支えるPFI船舶「ナッチャンWorld」が、まもなく新たに「ナッチャンNEO」へ更新される予定です。長年自衛隊の海上輸送を担ってきた同船が刷新されることで何が変わるのでしょうか。

高速性よりも経済性へシフト

「ブルールミナス」「はまなす」ともに、新造船の投入に伴って2025年に定期航路から引退した船です。契約は2025年3月に結ばれており、契約額は2026年1月から2035年末までの10年間で約305億円となっています。この「ブルールミナス」が、「ナッチャンNEO」というわけです。

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36ノットという高速性が特徴だった「ナッチャンWorld」。間もなく退役する(深水千翔撮影)。

「ブルールミナス」は内海造船瀬戸田工場で建造が行われ、2020年6月に竣工しました。船体サイズは全長144.13m、幅23m。車両搭載能力は12mトラック70台 と8mトラック1台、乗用車30台で、旅客定員は583人です。なお、航海速力は20ノット(約37km/h)となっています。

 また「ナッチャンNEO」としてPFI船舶へ投入されるにあたり、自衛隊車両や隊員の輸送に適したさまざまな改造が行われていると考えられます。

 今回、「ブルールミナス」と「はまなす」を導入することによる最大のメリットは、運航コストの改善です。「ナッチャンWorld」の速力は約36ノット(約66.7km/h)、「はくおう」も速力29.4ノット(約54.45km/h)と、共に高速性が特徴のひとつとなっています。

 しかし、ゆえに燃費が悪く、民間収益事業では「運航経費の半分程度を高額な燃料費が占め、売上のほとんどが運航経費で相殺される」と指摘されるような状況でした。

「ブルールミナス」と「はまなす」は、既存の2隻に比べて燃料費が半分程度となる見込みで、コスト競争力の向上が図られます。防衛省でも、緊急要請後の出発港を母港に限定せず、各船舶が民間収益事業を行っている近隣港でも可能にするといった運用ルールの見直しを図っていることから、今後は一般の人が乗る機会が増えるかもしれません。

 なお、運航・管理に関しては、2025年5月に防衛省が、双日を代表企業として、日本通運やリベラグループなどで構成する特別目的会社高速(SPC)マリン・トランスポート2と契約を結んだことを明らかにしました。

【NEOの字デカい!】新たな自衛隊のPFI船「ナッチャンNEO」をイッキ見(写真で見る)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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