陸自の「金曜カレー」はどんな味? 海自と陸自が輸送艦に同乗 文化も合流したらどうなった?

2025年4月に新造された輸送艦「にほんばれ」。実はこのフネは、海上自衛隊ではなく陸上自衛隊が運用していますが、毎週金曜には海自の慣習であるカレーが提供されます。陸自が動かす輸送艦では、このような海自と陸自の文化と慣習が入れ乱れる不思議な光景が広がっています。

陸自が動かす輸送艦で出すカレーはどんな味?

「にほんばれ」は海自の輸送艦とは異なる印象を受けます。軍艦というより“商船”に近い構造で、舷側窓が多く、不燃材の木製品や樹脂製品が随所に使われています。通路なども露出配管は少なくすっきりしており、軍艦特有の閉鎖的で金属的な雰囲気はなく、随所に防火服が掛かっていなければ商船の中と言ってもわからないくらいです。

 商船に近い構造なのは、建造コストを抑えながら、快適さと運用の柔軟性の両立を狙ったからです。一方で艦内では機関音が響き、振動も他の艦より大きく感じられました。これは他艦を経験している海自隊員も感じているようでしたが、使ってみて問題点を洗い出し、対策を講じていくのも一番艦の役目です。

 ある海自航海科員によると、商船的構造からか海自の艦艇とは舵の利き具合など操艦の「クセ」が違うといいます。「陸自さんがこんなクセのあるフネをよく操っている」と感心することもあるようですが、他の艦を知らず最初から「にほんばれ」を操艦する陸自隊員には「クセ」が普通に感じられるようです。

 居住区は明るく広く、曹士室は6人部屋で二段ベッド、幹部室は4人部屋の二段ベッド仕様で従来艦より快適性が高いようです。トイレは鉄道車両や航空機で採用されている節水性に優れる真空式で、ウォシュレット(温水洗浄便座)も付いています。

 ちなみに別の機会で見学した潜水艦のトイレにもウォシュレットが付いており、海自艦艇では近年、標準装備として普及しつつあるようです。アメリカ海軍など他国艦艇には見られない装備で、居住環境改善施策や日本独特の「トイレ文化」の反映ともいえそうです。

 2025年11月には、にほんばれ型の2番艦「あまつそら」、3番艦「おおぞら」が相次いで進水しました。「自衛隊海上輸送群」は陸自が人員を出し、海自が運用を支える統合チームです。人員が足りない海自と独自の船を持ちたかった陸自の思惑が折り重なって誕生した組織であり、商船テイストの独特の艦を動かします。文化も慣習も異なる陸海自衛隊は統合に向けて準備を進めてきましたが、これから実際の運用が試されます。

 海自の公式サイトには海自カレーが69種類も紹介されています。「にほんばれ」で提供された「にほんばれカレー」はコクがありながらマイルドな甘口で美味しかったですが、レシピが陸・海どちらの由来かは「機密」とのことでした。海自生まれではない「にほんばれカレー」がこの「艦めし」に加われば、新しい自衛隊の統合チームの象徴になるかもしれません。

【由来は海自?】これが陸自の輸送艦で提供されるカレーです(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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