また!? アメリカ肝いりの新型艦計画「やめます」「代わりは急いで造れるものを」 鍵は日本にあるのでは?
アメリカ海軍が新たなフリゲート「コンステレーション級」の計画を中止すると発表しました。後継艦は迅速な建造が求められています。これまでの経緯からすると、日本が新たな艦を提案する余地もありそうです。
そもそも新型フリゲートが外国艦ベースのワケ
冷戦期までアメリカの造船業は世界をリードしていましたが、冷戦終結後の軍縮、予算削減で約300か所存在した造船所は閉鎖され、大型艦船を建造できる造船所は数か所となっています。
冷戦終結に伴う軍縮、予算の削減の影響は造船能力だけでなく、開発能力の低下ももたらしています。冷戦期までは自前で開発できた水上戦闘艦の原型をヨーロッパで開発されたFREMMに求めたのは、その証左の一つと言えるでしょう。
なおフィーラン長官は今後について、「コンステレーション」と2番艦「コングレス」のみは建造を続行し、その後は「より迅速に建造できる新しい艦艇クラスに注力する」と述べています。
だったら日本も提案できるのでは?
近年では開発・建造期間の短縮とコストの縮減を狙って、他国が開発した水上戦闘艦の設計を流用して新型水上戦闘艦を開発することがトレンドとなっています。アメリカ海軍がコンステレーション級のベースをFREMMに選定したのも、その狙いがあったからです。
フィーラン長官はコンステレーション級に代わる新型水上戦闘艦について、「迅速に建造できる」ことを重視する考えを示しています。ドナルド・トランプ大統領はアメリカの造船能力の復活を掲げているとはいえ、一朝一夕で実現はしませんから、迅速な建造を重んじるのであれば、新たな水上戦闘艦も外国企業の設計をベースに開発される可能性は高いでしょう。
その場合、既に他国で実績のあるイギリスや韓国なども提案してくるものと思われますが、筆者は日本もオーストラリアに提案した「FFM-AAW」(改もがみ型)を提案してみても良いのではないかと思います。
既存の基本設計を使用して、導入国の仕様に合わせた新たな水上戦闘艦を開発するという手法は、オーストラリアへの提案で確立されていますし、FFM-AAWにはニュージーランドも導入に意欲を示していますから、実績は少ないとはいえ、自信を持って提案できるレベルにあると思います。
アメリカには、軍が使用する防衛装備品をアメリカ国内で製造しなければならないというルールがありますし、コンステレーション級と同様、兵装などの装備はアメリカ海軍に最適化されたものが搭載されるでしょうから、日本の造船・防衛産業へのメリットは、決して大きなものではありません。しかし、同じ基本設計を使用している艦艇であれば、有事・平時を問わず部品の融通の幅は広がりますし、訓練プログラムの一部共通化も見込めます。
それ以上に同盟国であるアメリカ、同志国であるオーストラリア、ニュージーランドと共に準同型艦でインド太平洋をパトロールすることは、軍事力を背景に海洋の自由利用を制限しようとしている節のある中国に、無言のプレッシャーを与えられる可能性も生じてきます。
この記事を執筆している12月上旬時点で、アメリカはまだコンステレーション級の代替案を発表していません。仮に日本がFFM-AAWを提案したとして、その提案をアメリカ海軍が受け入れる可能性を予測することは困難ですが、防衛装備品の設計を提案できるレベルの同盟国であることを認識させるのは、今後の日米同盟にとってプラスになることは間違いないと思いますし、その意味においても、FFM-AAWをアメリカに提案してみる価値はあると筆者は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。





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