「ランクルを“装甲化”するらしいんですが」民生車の軍事転用、成功には何が必要? 軍採用メーカーの答えは

防衛省が軽装甲機動車の後継として民生車両の装甲化を検討していると報じられるなか、タイではすでに同様の手法で開発された車両が軍に採用されています。タイの事例から、民生車ベースの軍用車両開発を成功させるカギを探ります。

「謎の装甲車メーカー」実はトヨタ・いすゞ車ベースの軍用車を開発

 2025年11月10日から14日までタイのバンコク近郊で開催された防衛・セキュリティ展示会「ディフェンス&セキュリティ2025」が開催されました。取材のため会場を訪れた筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は「W1」という名称の軽装甲車に目が留まりました。

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トヨタ「ハイラックス・ヴィゴ」をベースにしたタイ・ルン・ユニオン・カーのTR Transformer II(画像:Thai rung)

 このW1を出展していた「タイ・ルン・ユニオン・カー」という企業は、2022年に開催されたディフェンス&セキュリティや、他の東南アジア諸国の展示会でも、目にした記憶がありませんでした。

 そこで検索してみたところ、この企業はトヨタ自動車の民生用四輪駆動車「ハイラックス・ヴィゴ」をベースに防弾化した軍用車両「M50」(商品名MUV4)を開発してタイ軍の採用を勝ち取り、いすゞ自動車のピックアップトラック「D-MAX」(日本未発売)をベースとする輸出型軍用車両も開発していることがわかりました。

 日本ではNHKが2025年9月27日、防衛省が軽装甲機動車の後継として、民生用車両を防弾化(装甲化)した車両の導入を検討していると報じました。トヨタ自動車のSUV「ランドクルーザー」2車種と、いすゞ自動車のピックアップトラック「D-MAX」の計3車種を調達して防弾化し、2028年度に評価試験を実施すると報じています。

 防衛省は2025年12月の時点で、この報道が事実か否かを明確にしていませんが、仮に事実だとすれば、日本でも民生用四輪駆動車をベースに防弾車両を開発するうえでの利点や課題について話が聞けるのではないかと考え、同社の担当者に話を聞きました。

いすゞと密接な協力関係

 タイ・ルン・ユニオン・カーは1967年に「タイ・モーター・コーポレーション」として設立。当初はイギリスの自動車メーカー「ブリティッシュ・レイランド」のタイ向け車両を製造していました。しかし同社が1975年に倒産して以降は、トヨタやいすゞなどの日本メーカーや、シボレーなどのアメリカメーカーのタイ向け車両の製造や自動車部品の製造などにシフトして成長を遂げました。

 公式サイトにも記載されていますが、特にいすゞ自動車のタイ法人「いすゞモーターズ」と密接な協力関係を築いており、その縁から単なる組み立てだけではなく、いすゞの四輪駆動車をベースとする防弾車両などの開発も手がけるようになったとのことです。

【写真】これがベースの「トヨタ車」です!(画像)

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