「中国が9割を握る重要素材」を国産化へ 目指すは“深海” 驚きの次世代探査システムも“ぜんぶ国産開発”その最前線とは?

中国が9割のシェアを握り、関係次第で安定供給への大きなリスクが生じるレアアース。その国産化に向け、AUV(自律型無人探査機)を用いた次世代の深海調査システムの開発が進行中。海だけでなく「空のマシン」も作って深海に挑みます。

なぜ今「レアアース国産化」が重要なのか

 経済活動に必要な多くの鉱物資源を輸入に頼っている日本にとって、広大なEEZ(排他的経済水域)に眠る豊富な海底資源を開発し安定供給を確保することは、安全保障の上で極めて重要な取り組みです。国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所(海技研)では、内閣府が行う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の一環として、日本の深海に眠る鉱物を探査する海中ロボットシステムの開発を行っています。

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複数のAUVを同時に運用する試験の様子(画像:海上技術安全研究所)。

 海技研の藤原敏文研究統括監は「今、中国で産出されるレアアースの取引がどうなるのかなど、さまざまな心配があります。我々が行っているプロジェクトは、なるべくレアアースを国産で供給できないか、そういう道筋はないのかということを調べるプロジェクトです」と話します。

 開発しているのは、複数のAUV(自律型無人探査機)と探査機の充電機能を持つ深海ターミナルなどを組み合わせた次世代海洋無人機システムです。

 レアアースはスマートフォンやパソコン、LED照明から電気自動車のモーターまで幅広い用途で活用されている一方、最大の埋蔵量を誇る中国が精錬過程において9割という圧倒的なシェアを握っており、同国との関係でレアアースの安定供給が左右されるという大きなリスクが伴っています。

 政府は2026年1月から日本最東端の南鳥島沖でレアアース採鉱システムの接続試験を行う予定ですが、産業化までには様々な課題があります。その一つが、深海という環境で海底の広域調査を長期間にわたって行い、データを獲得する技術の確立です。

「レアアースがどこにあるのか、掘った時にどの程度、環境に影響が出るのかなど、資源を取りに行くだけではなく、海底・海中環境を調査するということが必要です」(藤原氏)

 海底調査では母船とケーブルでつながっているROV(遠隔操作無人探査機)を使う方法もありますが、ケーブルの長さで活動範囲が制限され、深海になればなるほど母船上でのオペレーションも難しくなるという弱点があります。

 かといって有人潜水調査船(HOV)は、深海という極限環境へ人間が赴くリスクに加え、安全を確保するための機器や設備が必要になるため運用コストが高く、商用化を見据えた広域の海底調査には向きません。

「我々はどちらかというと、汎用的に長期間使えるものを目指しています」と藤原氏は話します。

【なるほど!】これが「深海の“置くだけ充電”システム」です(画像)

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