「原付免許なんて誰でもすぐ取れるだろ」→今は全く違う!? 「非常に難しい」と批判も エントリー免許に一体何が起こっているのか?

運転免許なかでも“エントリー免許”といえる原付免許の取得が、一部で難しくなっています。ひと昔前は即日取得でき「誰でも取れる」イメージのあったものですが、変化の背景には社会課題が大きくのしかかっていました。

講習が受けられなくて免許がとれない! なぜ地域差が?

 原付講習の受講は道路交通法令で「(未受講者には)運転免許を与えないことができる」という形で義務付けられています。それにも関わらず、運転免許を初めて取得する人たちの原付免許に、なぜ地域差が生じるのでしょうか。最も大きな理由は、希望者の手間を省くためだと警察庁運転免許課は説明します。

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公明党オートバイ議員懇話会の国会議員、石川博崇会長(中島みなみ撮影)

「学科試験の受験前に講習をすませておくと、学科試験の合格と同時に免許証が交付されます。講習会場と運転免許試験場の2回で免許取得が可能です。しかし、学科合格後に講習を受けると、免許受け取りのために3回目の手間がかかります。そのため講習を事前にすませておくべき、という案内がされていると考えられます」

 ただ、現実はそれほど簡単ではありません。福井県警察本部は、原付免許の交付について次のように説明します。

「当県では、原付試験(学科・適性)合格後、合格者が免許センター窓口において、担当者を通じて自動車学校に原付講習を予約し、手数料の納付を行っている」

 福井県の場合は、原付講習を警察が受け付けることで、講習開催に責任を持つ形をとっています。しかし、原付講習を外注化した地域では、免許取得希望者が自分自身で講習開催会場に問い合わせて予約を取る形があります。こうした地域では何が起きているのでしょうか。前述の懇話会で警察庁は次のような課題を指摘しました。

「予約制を取っている教習所の場合、都道府県によって差はございますけれども、通常では予約から1か月以内には受講できるものと認識しております。ただし、年度末や夏休み等の繁忙期には受講から予約まで2か月程度かかる場合もあるというふうに聞き及んでおります」

 原付講習終了証明書の有効期限は、都道府県公安委員会の規程で1年以内と定められており、講習受講の自由度はかなり高いものになっているはずです。しかし、現実は運転免許の仕組みが何もわからない希望者に、見通しが立ちにくい制度を押し付けているのが実態です。

 原付免許取得者の減少は、若者比率が減っている高齢社会に要因があるとされていますが、降雪地域では冬場の原付講習は行われません。しかし、通学や通勤などで使いたいと思う雪解けの春は、自動車教習所も普通免許取得希望者が押し寄せ、やはり原付講習を実施できる余裕はありません。一方で、原付バイクは普通免許で運転ができますが、普通免許を取得している場合は、原付講習を受ける必要がない、という制度に変わりはありません。

 原付免許には講習が必要と定めた以上、簡単な試験で、最少限の取得費用と最も短い期間で取得できる運転免許を全国一律で維持する工夫が求められています。

【え…!】これが今の「原付免許」の流れと価格です!(画像)

Writer:

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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