「エイみたいな異形の旅客機」なぜ実現困難? 既存機より「優れた点」多数も… 「航空機研究者」に聞くと納得の理由が

各航空機メーカーが打ち出す将来の旅客機の設計プランのなかには、胴体と翼が一体となり、まるで“エイ”のような形状が特徴のものが存在します。既存の旅客機よりも優れたポイントがあるにも関わらず、実現は難しいとも。なぜなのでしょうか。

「エイみたいな旅客機」なぜ実現が難しいのか

「BWBは軍用の爆撃機などでは存在しますが、旅客機とは求められる仕様がまったく異なるため、単純に転用できるわけではありません。まず懸念されるのが機体の安定性です。機体が平たい形状になることで、飛行中の振動が増え、乗り心地が悪化する可能性があります」

 さらに同担当者は、空港側の課題も大きいと指摘します。

「現時点ではBWB旅客機は就航していないため、搭乗橋(ボーディングブリッジ)をはじめとする空港インフラを、根本から見直す必要があります。機体形状が大きく変わることで、既存の設備がそのまま使えなくなる可能性が高いのです」

 一方で、BWB旅客機と密接に関係しているのが、燃料に水素を用いることで二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「水素旅客機」の研究です。

「液体水素を燃料とする航空機では、燃料タンクをどこに配置するかが大きな課題になります。液体水素はマイナス253度という極低温で保存する必要があり、非常に高い断熱性能が求められます。例えば、熱湯を入れて1か月放置しても温度が1度下がるかどうか、というレベルです。また、液体水素は従来のジェット燃料と比べて体積が約4倍になるため、タンク自体も非常に大型になります。このタンクを翼の中に収めようとすると、翼が厚くなりすぎて航空機として成立しません。そのため、燃料タンクの配置が機体形状そのものを左右するのです」

 将来の旅客機開発において、現在と同程度の輸送能力を維持しながら、大型で高性能な燃料タンクを搭載するという観点では、BWB旅客機は理にかなった選択肢のひとつといえるでしょう。

【画像】えっ…これが「エイみたいな旅客機」驚愕の全貌と客室です

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国内航空会社を中心に取材を続け、国内・海外を奔走する日々を送る。ゆとり世代。

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