「長~い駅名」がやけに続くなぁ… じつは背景に「大災害」 いばらの道を乗り越えるローカル線の知恵
乗っていると、駅名標の長い表記が次々と現れる第三セクター鉄道があります。そこには存続のために知恵を振り絞ってきた鉄道会社の経営努力がありました。
長ーい駅名のワケ
駅に停車時に車窓から駅名標を眺めていて気づいたのは、駅名の前に長い「駅名ネーミングライツ(副駅名)」が付いている駅が実に多いことです。井原鉄道の15駅のうち、ネーミングライツが付いているのは過半数の8駅に達します。
ネーミングライツは開業25周年を迎えた2023年度に始まり、井原線全15駅で募集を始めました。価格は年間33万―110万円(税込み)で、新たにネーミングライツを取得した際には4万4000円の駅名標改修費がかかります。
初年度に6駅で契約し、現在は8駅に増えているのは上々の滑り出しです。最初は駅名標に副駅名を表示する特典だけだったものの、2024年度からは、列車が駅に停車する際に車内放送でその駅の命名権を持つスポンサーの放送を流すようにしました。こうした営業努力を重ね、スポンサーの一段の呼び込みを狙います。
なお、まるでネーミングライツを冠したような名称の「子守唄の里高屋」(井原市)と「早雲の里荏原」(同)はともに正式な駅名です。うち早雲の里荏原にはネーミングライツが付いており、これを含めると「早雲VILLAGE(化繊ノズル製作所)前早雲の里荏原」という、丸カッコも含めて26字もあるとても長い表記になります。
井原鉄道は開業後に経営難に陥り、負担軽減のために2006年度には沿線自治体などが線路などのインフラ部分の費用を負担する「みなし上下分離」方式に移行しました。一方で会社としてもたゆまぬ経営努力をしており、ネーミングライツを積極的に集め、「デニムトレイン」や「夢やすらぎ号」、「スタートレイン」などと名付けられた装飾車両を通常の列車に運用して好評を博しています。
開業までの道のりも、駅名標の表記も、地元から支援されてきた歴史も「長ーい」づくしの井原鉄道は、これからも息長く走り続けることでしょう。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。





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