「長~い駅名」がやけに続くなぁ… じつは背景に「大災害」 いばらの道を乗り越えるローカル線の知恵
乗っていると、駅名標の長い表記が次々と現れる第三セクター鉄道があります。そこには存続のために知恵を振り絞ってきた鉄道会社の経営努力がありました。
建設開始から33年を要し「11111」の日に開業
中国地方のJR西日本伯備線と福塩線をつなぐバイパス線のような路線が、第三セクター鉄道である井原(いばら)鉄道の井原線です。岡山県総社市の総社駅と、広島県福山市の神辺駅の全長約42kmを結びます。
総社から乗り込んだ筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は、駅名標の表記が長い駅が大半を占めていることに気づきました。背景には、開業まで紆余曲折をたどり、2018年の西日本豪雨では全線復旧まで2か月弱を要するといった“いばらの道”を乗り越えた三セク鉄道の知恵がありました。
井原線は、もともと国鉄の新線にするため1966年に工事が始まりました。しかし、経営難に陥った国鉄の改革に伴い、1980年に建設を凍結。岡山県と広島県、沿線自治体などが出資する井原鉄道が1987年に設立され、88年工事を再開。開業したのは平成11(1999)年1月11日の「1並び」の日で、国鉄による建設開始の実に33年後のことでした。
総社で井原鉄道のプラットホームは5、6番線、隣のJR西日本は0―3番線で、「4番線」は欠番になっています。JR西日本から乗り継ぐには橋上駅のJR改札口をいったん出て、「井原線入口」の看板のある場所からホームに下ります。
止まっていた1両のステンレス製ディーゼル車両「IRT355形」に乗り込み、乗車口で整理券を取ってクロスシートに腰かけました。IRTは「井原鉄道の列車」を意味する英語の「Ibara Railways Train」の頭文字を取っており、「355」は搭載しているディーゼルエンジンの最高出力「355馬力」にちなんでいます。
面白いのはJR西日本とは別のホームを使いながらも、隣の清音(総社市)までは複線で電化された伯備線の線路を走ることです。この区間で井原鉄道は、JR西日本が保有する線路を借用する第二種鉄道事業者になっています。井原鉄道の初乗り運賃は大人250円ですが、総社―清音間はJR西日本と同じ190円の特定運賃で乗ることができます。




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