「アムトラック」がなければ上陸作戦は失敗していた? 日米戦で重用された“地味装甲車” 映画『ペリリュー』にも登場

アニメ映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』で、アメリカ海兵隊の主要装備として登場する水陸両用車両「アムトラック」。一見すると地味ですが、実は同車が生まれたことは、現在の我が国の防衛戦略にも大きな影響を与えていました。

三菱重工製の水陸両用車に繋がる系譜とは

 こうしてアムトラックは対日戦で不可欠な兵器であることが認められました。

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1960年代、アメリカ海兵隊で使われるLVTP5水陸両用車(画像:アメリカ海兵隊)。

 タラワ以降の太平洋での上陸作戦で、アムトラックを見かけない戦場はありません。同時に装甲を強化した改良型LVTや、戦車の砲塔を搭載して、上陸後も一定時間なら火力支援能力を発揮できた「アムタンク」と呼ばれる派生型も開発・量産されます。アニメ映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』は、1944年9月に実施されたパラオ諸島ペリリュー島の戦いがテーマですが、上陸シーンにはしっかりとアムトラックが登場しています。

 ペリリュー以降も、フィリピンや硫黄島、そして沖縄と、激しい上陸作戦が続きますが、なぜかアムトラックの活動は目立たなくなりました。危険な珊瑚礁が減ってきたことに加えて、日本軍が上陸海岸で抵抗せず、アメリカ兵を島の内陸部に引き込んでから反撃する戦術に切り替えたからです。

 とはいえ、アムトラックの重要性は変わりませんでした。戦後も、アメリカは新型の水陸両用車の開発を続け、海兵隊ではLVTの倍の積載量があるLVTP-5を導入してベトナム戦争で使用したほか、1980年代には性能強化版のLVTP-7が登場しています。

 いずれも現場でのニックネームは一貫してアムトラックです。そして1985年の名称改定によって、LVTP-7はAAV7に改称されます。そう、離島の防衛力を強化するために陸上自衛隊が2015年に導入した「水陸両用車(AAV7)」が、これになります。

 その後、陸上自衛隊には「日本版海兵隊」と称される水陸機動団が編成され、この部隊の主要装備として水陸両用車(AAV7)は増備されたほか、三菱重工ではその後継として、国産の水陸両用車が開発されています(2028年度の装備予定)。

 かつて日本軍を苦しめたアムトラックが、現代になり日本の離島防衛の象徴となっているのは皮肉な話かもしれません。しかし、逆に言うとそれだけ日本の本気度を示す装備であるとも評価できます。十分な離島防衛能力を維持し続けることが、日本の覚悟を示し、不測の戦争を抑止する重要な力になるのです。

【未来感あふれすぎ!】これが開発中の「 日の丸水陸両用車」のイメージです

Writer:

1973年生まれ、上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退。 雑誌編集者、ゲーム会社ウォーゲーミングジャパン勤務等を経て、各種メディアにて歴史・軍事関連の執筆や翻訳、軍事関連コンテンツの企画、脚本などを手がける。Youtube「宮永忠将のミリタリー放談」公開中。

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