「サンタは領空侵犯しても撃墜されません」→される可能性が出てきた!? 自衛隊の武器使用「新基準」で“サンタ危うし”なワケ

冬の風物詩ともいえるクリスマス。そんな時期にプレゼントを配って回るサンタクロースですが、勝手に日本の領空を侵犯しているとなると、自衛隊の戦闘機が緊急発進するみならず、撃墜措置が取られる可能性もあるとか。なぜでしょうか。

サンタクロースを撃墜できる? 全くあり得ないわけでもないワケ

 上空を飛行する航空機に対して武器を使用するとなると、相手は撃墜されることとなり、当然乗員の生命に関わります。そのため、自衛隊では武器使用について慎重な基準を設けています。過去の国会答弁に基づくと、武器使用が許されるのは次のようケースです。

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航空自衛隊のF-2戦闘機(画像:航空自衛隊)。

 一つは、領空侵犯機が自衛隊機の警告や誘導に従わずに退去せず、さらに自衛隊機に対して実力をもって抵抗してきた場合です。

 これに関しては、よく自衛隊機を操縦するパイロットの生命を守るための個人の権利である正当防衛として武器使用が許されている、という意味に誤解されがちです。実際には、自衛隊機が撃墜されてしまうとその後の任務遂行ができなくなってしまうため、それを防ぐために第84条を根拠に武器の使用が許されているという立て付けになっています。

 そしてもう一つは、国民の生命および財産に対して大きな危険が間近に迫っている場合です。たとえば、日本の領空を侵犯した爆撃機が上空で爆弾倉を開くなどした場合には、地上に住む国民の命に危険が差し迫っていると捉え、これに対して武器を使用することができるという整理が過去の国会答弁でなされたことがあります。

 これらを踏まえると、サンタクロースに対して自衛隊の戦闘機が武器使用を行うことは一見するとできないように思われます。というのも、サンタクロースが戦闘機に実力をもって抵抗してきたり、あるいは地上に爆弾を投下しようとしたりすることは、およそ想定されないためです。

 しかし最近、防衛省・自衛隊では、領空侵犯をしてきた物体が気球や無人機である場合に限定して、新たに武器使用を行うことが出来るケースを設けました。それが、侵犯機が他の航空機の安全な飛行を阻害する場合です。これは、2023年2月にアメリカで発生した中国の偵察気球撃墜事案を受けて、新たに整備されたものです。これについて、小杉裕一防衛省大臣官房審議官(当時)は2023年4月14日、国会で次のように説明しています。

「防衛省におきましては、外国の航空機による領空侵犯対処に万全を期すため、その在り方については不断に検討してまいりましたところ、先般の米国による気球の撃墜を受けまして無人の気球に対する関心が高まる中、領空侵犯する気球を含む無人の航空機につきましては、正当防衛又は緊急避難に該当しなくても武器を使用することが許される場合があると明確化いたしました。

 その上で、例えば、そのまま気球を放置すれば他の航空機の安全な飛行を阻害する可能性があるなど、我が国領域内の人の生命及び財産、また航空路を飛行する航空機の安全の確保といった保護すべき法益のために必要と認める場合には、武器を使用して適切に対処することとなります」(小杉裕一防衛省大臣官房審議官『第211回国会 衆議院 法務委員会議録』第9号、15頁(令和5年4月14日))

 つまり、もしサンタクロースのソリが民間航空機と衝突しそうなコースを飛行し続けるような場合には、撃墜という手段がとられる可能性もあります。ただし、これまで有人機に対する武器使用は当該機の乗員の生命を奪うことになるため、慎重な姿勢がとられ続けてきました。サンタの生命を重視するか、それとも民間航空機の乗員・乗客の安全を重視するか、いざという時には難しい判断を迫られそうです。

【デカい風船…】これが、上から見た中国の偵察気球です(写真)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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