「政府の力強い後押し」1兆円! アツいぞ「造船」順風は続く? “潮目の変化”も顕在化

日本の造船業に再生の機運が高まっています。政府は1兆円規模の投資を掲げ業界を後押ししますが、足元では少しずつ、状況が変わってきています。

中韓に追いつけるのか?1兆円の内訳は

 必要な投資額1兆円の内訳は、造船業界による資金調達で3500億円規模、政府が造船業再生基金などで3800億円規模、残る部分はゼロエミッション船の開発支援などで2800億円規模です。2025年度の補正予算では、造船業再生基金を創設するため1200億円が計上されており、先進的な機器の導入や新技術の開発などを行う事業者を対象に今後10年間で計3500億円規模の支援を実施する方針です。

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常石造船の常石造船所(深水千翔撮影)

「2025年は支援する仕組みができた。2026年はこれを成果につなげなければいけないと覚悟を決めている」(新垣海事局長)

 このように国をあげて造船業を後押しする背景には、日本が新造船の受注、建造ともにシェア率を大きく落としていることがあげられます。

 1956年に建造量が世界1位となった日本の造船業は、かつてシェア率50%を誇っていました。しかし、2024年の新造船受注のシェア率を見ると中国が71%、韓国が14%に対して、日本は8%。同年の竣工量を見ても日本は900万総トンですが、2位の韓国は2000万総トン、1位の中国は3900万総トンと大きく水をあけられています。

 特に、私たちの生活に欠かせない電気を作る発電所の燃料として使われる天然ガスを運ぶ大型LNG(液化天然ガス)船は、三菱重工業や川崎重工業などが手掛けていましたが、2019年を最後に国内で建造されていません。現在、LNG船は韓国が世界シェアの大半を握っており、中国の造船所も存在感を示しつつあります。

 ロードマップに関する海事局の資料では「エネルギー政策に係る船」としてLNG船が取り上げられ、検討会でも今後のテーマとして「LNG運搬船の建造体制整備」が触れられていますが、実際に建造を行うにはさまざまな面で高いハードルがあり、今治造船やJMUも実現可能性の調査・検討に留まっている状況です。

 日本財団の海野光行常務理事は「海事業界に関わるようになって、これほど造船というワードがニュースを通じて、連日目にすることはなかった」と述べつつ、米トランプ大統領や高市早苗首相の方針があったという点に触れ、「今の大波に乗るために対応するのも大事ですが、変化を起こす側に身を置き、攻めのチャンスが巡ってきたと受け止めています」と話していました。

 ただ、業界の「順風」が続くとは限りません。海運では、政情不安により迂回が続いていた紅海とスエズ運河について、2026年1月から海外大手の一部が通航を再開しています。これまでは欧州-アジア間でスエズを避けてアフリカの喜望峰を回っていたことで運賃の高騰が続いていました。

 しかし、スエズの通航が本格的に再開すれば運賃が下がり、時間が短縮されることで“船余り”が起き、新造船の供給過多に陥る可能性が指摘されています。すでに新造船供給の増加と運賃の下落による影響が出ており、コンテナ船社のオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は1月に発表した25年10―12月期決算で、税引き後損益が8800万ドルの赤字だったことを明らかにしています。“世界単一市場”である海運や造船市況の変化は、日本も例外なく影響を受けます。

【すごい伸び…】これが「造船」のかなりイイ将来推計です(画像)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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