「野放し」で事故多発! 鉄道も「モバイルバッテリー規制」は必要か 航空機みたいなルールは守れない?

航空機内でモバイルバッテリーが発火・発煙する事故が相次ぎ、規制が強化される予定です。鉄道でも同様の事故は多発していますが、持ち込みや使用に関する制限はありません。なぜ規制が難しいのでしょうか。

規制できない根本的な理由

 羽田空港の1日あたりの国内線旅客数は約17万人、半分が出発とすると約8.5万人が保安検査を受けている計算です。一方、JR東日本には乗車人員が8.5万人以上の駅は47もあります(2024年度)。

 羽田空港第1・第2ターミナルビルの総面積が計60万平米なのに対し、約43万人が利用する東京駅は18万平米しかありません。高田馬場や五反田など、山手線のみが停車する小規模な駅ながら10万人を超えている例もあり、これでは検査などできるはずがありません。

 鉄道で検査の実施例がないわけではありません。中国では高速鉄道や地下鉄で金属探知機やX線を用いた手荷物検査を実施していますが、航空ほど厳密なチェックではないようです。それでも広大な待合スペースを用意した上で実施しているため、日本が真似するのは難しいでしょう。

 そこまでの規制が必要かという疑問もあります。密閉空間における発煙・発火が重大な事故につながりかねないのは鉄道も航空も同じですが、飛行中の火災が対処困難なのに対し、鉄道は速やかに停車できます。車内空間も広く、消火作業、荷物の移動、避難が容易なので、仮に発火しても航空ほど深刻ではないという見方もあります。

 モバイルバッテリーに限れば、この指摘は正しいかもしれませんが、問題を危険物まで広げると話はややこしくなります。モバイルバッテリーよりはるかに危険なガソリンや凶器は秘密裡に持ち込まれ、多数の人を殺傷します。それは1995年の地下鉄サリン事件や、2015年の東海道新幹線放火事件、2021年の京王線刺傷事件などの実例が示しています。

「鉄道に手荷物検査は不可能、事件は想定外」で済ませてよいのか、それこそがモバイルバッテリー規制問題の本質的な問いなのかもしれません。

【火元はモバイルバッテリー?】機体の一部が焼け落ちた旅客機(写真)

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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