スバル「アルシオーネSVX」 360度ガラス張りの理由と、いまへつながる遺産とは?(画像13枚)

発売はバブル崩壊のさなか

 デザインやメカニズムなど全面的なチャレンジにより生まれたのが、新世代スバルのフラッグシップクーペ、「アルシオーネSVX」でした。90年代の高級車らしく電動式4WS、ABS、クルーズコントロールなどのハイテク機能を上級グレードでは標準化。エクステリアには、エクセーヌもしくはレザーのシートを備え、フルオートエアコン、専用開発の高性能オーディオシステム、キーレスエントリーなど充実装備を誇りました。

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「アルシオーネSVX」のインテリア。上級グレードのバージョンLはレザー内装が奢られた(大音安弘撮影)。
「アルシオーネSVX」のインテリア。上級グレードのバージョンLはレザー内装が奢られた(大音安弘撮影)。
「アルシオーネSVX」のインテリア(画像:スバル)。

 しかしながら、スバルの意欲作、「アルシオーネSVX」の販売は、成功とは程遠いものでした。バブル崩壊による高級車市場の低迷に加え、333.3万円~399.5万円と、スバル車としてはずば抜けて高価だったことも災いしました。またライバルとなる国産クーペはスポーツカーとしてスペックを強調したものが多く、数字よりもGTの本質を追求した「SVX」は、実に通好みのクルマだったといえます。そのため、6年間の総生産台数は、2万4379台と極めて少ない上、国内販売も初年度の1723台をピークに年々減少。わずか5942台にとどまり、その多くは海外で販売されました。加えて、メインマーケットとなる北米の景気動向が思わしくなったことも、この数字に反映されてしまったようです。

 結果として、2世代にわたって不遇の運命を背負ってしまった「アルシオーネ」ですが、手に入れて「SVX」の虜になってしまった熱心なファンも多いと聞きます。そして、当時のスバルの開発者たちが挑んだ「500マイルを快適に移動できるツーリングカー」という思想や、FRライクな操る歓びがあるVTD-AWDシステムの実用化といった技術へのスタンスは、安全かつ走りの良さで人気を集める現代のスバル車へとしっかり受け継がれ、今日のスバル人気へと繋がっているといえるでしょう。

【了】

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Writer: 大音安弘(自動車ライター)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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コメント

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5件のコメント

  1. "セレクタリーカー" → "セクレタリーカー" の間違いでは?

    • ご指摘ありがとうございます。 訂正いたしました。

  2. 過去においても、
    現在においても、
    未来においても、
    国産車で一番SEXYな車。
    異論は認めない。

    このぐらい言わせてもらってもバチは当たらないだろう?

    • 日本語ではカワセミ。ギリシャ神話にも出てくる名前です。そういう由来を知ると、全く同感。

  3. 初代いすゞピアッツァも最初見た時は退いてしまったが、あのデザインも今に溶け込んでるし、スバル車は更に水平対抗6気筒の四駆でやってきましたからね、願わくばこのシステムのFFも乗ってみたかったです。