飛行機は雲に入るとなぜ揺れる? 意外と複雑な空の航路事情 安全のための工夫とは
機体が揺れる気象状況、ほかには?
――ほかに、飛行中に機体が揺れるのはどのような場面があるのでしょうか。
飛行機の揺れは空気の「渦」、つまり乱気流が存在する場合に起こります。お話した積乱雲中における乱気流を含め、おおむね6つに分類され、残り5つには次のようなものがあります。
●乱気流の種類
・「『山岳波』による乱気流」:気流が山脈を越えるときに起こる。山に近い空港の離着陸時に遭遇しやすい。
・「晴天乱気流」:地球上を西から東へと流れる「ジェット気流」付近で起こる。日本付近では特に、冬季の「寒帯前線ジェット気流」が非常に強く、11月から3月ころまでその影響を受ける。乱気流にともなって雲が発生していれば、雲の形の崩れが乱気流の存在を示してくれるが、晴天で雲が全くない状況でも発生することがあり、この場合は警戒できず乱気流に巻き込まれることがある。
・「前線面上の乱気流」:寒冷前線付近で発達する積雲系の雲のなかでは、低高度から雲頂高度(雲の最も高い部分)付近までの各層中に乱気流が発生する。一方、温暖前線付近には乱層雲(いわゆる雨雲)ができるが、このなかでは積乱雲ほど大きな揺れは起こらない。
・「人工の乱気流」:ボーイング747型機やボーイング777型機などの大きなジェット機は飛行中、後方に大きな乱気流を発生させる。これを航跡乱気流(ウェイク・タービュランス)と呼ぶ。通常は1、2分程度で消散するが、気層が安定しているような場合は5分以上も継続することがある。
・「低高度の乱気」:空港が山岳地帯や丘陵地帯にあったり、滑走路付近に格納庫があったりした場合、強風のなかで離着陸する際、乱気流に遭遇することがある。
――完全に揺れないフライトというのは難しいのでしょうか?
空気を利用して飛行している限り、完全に揺れがないフライトというのは無理だと思います。お話した通り、パイロットは気象レーダーを用いて雨雲などを避け、なるべく揺れの少ないフライトを提供しています。
積乱雲ないし雷雲は昔から恐怖の的でしたからね。第二次大戦中にもパイロットには、戦闘中に積乱雲ないし雷雲に遭遇したら、離脱しても敵前逃亡ではなく緊急避難と見なす(本来はその後に違うものと遭遇したら、と続くのですが、それは趣旨と無関係なため省略)という位、一旦入ったら周囲も見えない風もすさまじい、それこそ当時のプロペラ機では墜落、下手すれば空中分解にも直結しかねない恐怖の源でしたから。