ささいなミスで2兆円の損失!? タンカーの油流出事故はなぜ起き、どう防ぐのか

かくて事故は起きた 「ダイヤモンド・グレース」の場合

 日本郵船は2018年3月15日(木)、同社の原油タンカー「ダイヤモンド・グレース」による原油流出事故から20年が経過したことを受け、これを題材とし、教訓を風化させないことやグループ社内の安全意識の向上、およびその取り組みを広く周知するために制作した安全推進ビデオの記者説明会を開催しました。

 1997(平成9)年7月2日、日本郵船の原油タンカー「ダイヤモンド・グレース」は原油25万7042トンを積載し、川崎港(京浜港川崎区)の京浜川崎シーバース(原油やLNGなど喫水の深い液体貨物運搬船の積荷を搬出入する海上の係留施設)へ向かい航行していました。東京湾の入口である浦賀水道の南方沖合で水先案内人が乗船、警戒船2隻を配置しつつ浦賀水道を通過したのち、同日午前10時5分、東京湾中ノ瀬西端の浅瀬へ乗り揚げます。

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事故詳細が書き込まれた、当日使用された海図より。「底触」とは、浅瀬に船底が触れること(2018年3月15日、乗りものニュース編集部撮影)。

 国土交通省の資料によれば、乗り揚げ、つまり浅瀬に船底が接触した際、「ダイヤモンド・グレース」は船体および油槽に亀裂や凹みなどの損傷を受け、結果約1500キロリットルの原油が流出したといいます。流出した油は油回収船や人力の汲み取りにより、7月4日21時30分ごろまでにそのほとんどを回収。また油処理剤の散布による処理も施され、事態は収束に向かいました。

 事故発生当初、流出原油は1万5000キロリットルと伝えられていましたが、もしその量だったら漁業や観光への影響はもちろん、沿岸の工場における冷却水が汚染されるなどし、およそ2兆円の経済的損失だったといわれているそうで、「私はこの場にいられなかった(=日本郵船はなくなっていた)のではないかと思います」と、説明にあたった同社海務グループ安全チームの本元(ほんがん)さんは話します。

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