ささいなミスで2兆円の損失!? タンカーの油流出事故はなぜ起き、どう防ぐのか

大きな事故の小さすぎる原因

 事故のもっとも大きな原因は「コミュニケーションエラー」といいます。その詳細はビデオの再現ドラマにも描かれていましたが、誰かがほんのひと言、声をかけるだけで避けられたという、実にささいなものでした。

「船橋(ブリッジ)にいた水先案内人、船長、そして当直航海士の3人が、浅瀬の存在に気づいていたんですが、ちょっとした確認を怠ってしまったがゆえに、発生した事故といえます」(日本郵船 本元さん)。

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説明にあたった日本郵船海務グループ安全チームの本元さんは船長経験者(2018年3月15日、乗りものニュース編集部撮影)。

 事故を受け、日本郵船社内でもさまざまな取り組みがなされたといいます。社員教育はもちろん、CMC(危機管理センター)が設けられ、実践に則した訓練も実施されているとか。今回のビデオ制作も取り組みのひとつですが、事故の記憶を風化させないといった理由のほかにも、コミュニケーションエラーを避けるために上司、部下、所属、忖度なく意見をぶつけあう「オープンコミュニケーション」の実施に力を入れて制作したそうです。

「IoTなど、当社もそうした新しいものを追い求め、さらなる安全レベルを上げていくのはもちろんですが、どれほどそうしたものが発達していったとしても、最後に差別化を図れるのは人間のヒューマンタッチな部分かと思われますので、そうしたことを忘れずに、いま我々がやっている20年間の取り組みを今後もマンネリ化することなく続けて行きたいと思っております」(日本郵船 本元さん)

 なお事故発生21年にあたる今年の7月2日にはイベントを予定しており、今回制作したビデオも活用する構想があるそうです。

【了】

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