新幹線にも「翼」がある? 先頭車のノーズ、その長さと形の理由

新幹線にも「翼」がある?

 自動車の運転席や航空機の操縦席は前だけに付いており、車両や航空機の前後の形は非対称です。しかし鉄道車両の多くは終点で折り返してそのまま逆向きに走れるよう、前後が対称になっています。実はこの鉄道ならではの特性が新幹線のノーズ形状に影響を与えています。

 空気は目に見えないためあまり意識はしませんが、高速で走る新幹線の周りには境界層という空気の層が貼り付いています。そしてその空気が最後部の車両から引きはがされるとき、空気の力で車両が揺れてしまい、乗り心地を損ねます。

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700系のノーズ側面、赤色で示した線が航空機でいう水平尾翼に相当する役割を担う(児山 計撮影)。

 そこで新幹線では、最後部で空気の流れを整えてきれいに空気をはがすようなノーズ形状を開発しています。

 700系新幹線のノーズは側面から見ると弧を描いている部分があります。この部分は最後部車両になったとき、航空機の尾翼のように、空気の流れを安定させる意図があります。一方で先頭車になったときはトンネルドン対策として断面積の変化を一定にする必要があるため、先頭と最後尾両方の事情を考慮しつつ、ベターな形状を求めた結果といえます。

 このような形状の開発には膨大な回数のシミュレーションが必要です。かつてはクレイモデルを造って風洞装置にかけ、それをもとに形状を検討していたため分析に大変時間がかかりました。現在はコンピューター上でシミュレーションを繰り返すことで、これまでとは比較にならないほどの形状を細かく検討できるようになり、さらに遺伝的アルゴリズムといった理論の導入で、より多様な形状の検討ができるようになりました。

 2018年に量産先行車が登場したJR東海のN700Sは、N700系からさらに空力的な進化を遂げ、最後部での整流を考えたスリット状のくぼみが設けられています。現代の新幹線車両が持つ複雑なノーズの形状は、人間とコンピュータの「二人三脚」で作り出したものなのです。

【了】

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コメント

4件のコメント

  1. 「車体の断面積が一定の割合で大きくなることが望ましい」……航空機におけるエリアルールなんですが、以外と言及されてなかったりしません?

    • 「以外」→「意外」でした。

    • 自分も前からそう思ってましたが、おそらく「音速付近での抗力増大を緩和する」のが目的ではないので、工学的には別の概念として扱われるのだと思います。もっとも、分野が異なるがゆえに気づいていない人は多そうです。

  2. 翼の生えたエンジェル?