【鉄路の脇道】一筆書きで帰省する 行きと帰りで経路を変えるメリット
通常の旅行は出発地と目的地を往復するもの。しかし「一筆書きのようにぐるりと一周しながら本来の目的地に立ち寄るルートなら、出発地と目的地が同じになることもあります。北陸新幹線の開業を機に「一筆書き」のルートに目覚めた筆者が語ります。
きっかけは北陸新幹線の金沢開業
私事ですが、実家が福井にあります。変な遠回りをせずにまっすぐ帰るときは、東海道新幹線で米原に出て、米原から特急「しらさぎ」で福井着というルートを選んでいます。
このルートの素晴らしいところは、おもにふたつあります。ひとつ目は、米原に停車する「ひかり」がおおむね1時間に1本あること。そしてふたつ目が、米原では「ひかり」が「しらさぎ」に必ず接続するということです。
つまり、往年のL特急を思わせるようなパターンダイヤで実家に帰れてしまうわけです。私に決断を求められるのは「何時の『ひかり』に乗るか」だけ。このシンプルさゆえに、遠回りしたくなるのかもしれませんが。
そんな帰省ライフ、あるとき選択肢が生まれました。2015年3月、北陸新幹線の長野~金沢間延伸開業です。金沢まで北陸新幹線で移動し、そこから特急「しらさぎ」、あるいは「サンダーバード」で福井にアプローチすることが可能になりました。とはいえ開業直前の私はといえば、「思い出の北陸本線が、三セクになってしまうなんて……」と、わくわくするよりも枕を濡らすような日々を過ごしていました。
「一筆書き帰省」の誕生
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Writer: 蜂谷あす美(旅の文筆家)
1988年、福井県出身。慶應義塾大学商学部卒業。出版社勤務を経て現在に至る。2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅と牛乳を中心とした随筆、紀行文で活躍。神奈川県在住。
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