唯一無二「震災工作車」 マルチに活躍の救難車両がふたりしか乗りこなせなかったワケ(写真26枚)

かつて静岡市消防局が所有していた「震災工作車」なる車両がありました。さまざまな装備を備え、1台で何役もこなせるものでしたが、完全に乗りこなせたのはふたりだけだったといいます。その理由は、一目瞭然かもしれません。

活躍しないことが一番

 震災工作車は、民間に払い下げられたとはいっても完全に引退したわけではありません。2014年2月14日の静岡県東部豪雪では、すぐに動ける車が履帯式であるこの震災工作車しかなく、近隣地域の除雪に出動した実績もあります。消防局からは引退しましたが、富士山のふもとで災害に備える「第二の人生」を送っているといえます。また地元のイベントで展示されることもあり、子供たちには大人気だそうです。

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後部にはウインチが付いている。ナンバープレートの下には牽引用フックがある(月刊PANZER編集部撮影)。

 現在の所有者であるカマド社の代表取締役社長である小林氏は、NPO法人防衛技術博物館を創る会の代表も務めており、引退したら人知れずどんどんスクラップにされて消えてしまう国産戦車の「技術遺産」を動態保存しようと活動しています。

 この震災工作車も日本に1台しかない技術遺産です。御殿場に「防衛技術博物館」が完成したらそこで保存されて、「第三の人生」を歩むことになります。戦車も震災工作車も活躍することなく引退していくことが一番良いことなのです。

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前部誘導輪のアップ(月刊PANZER編集部撮影)。
後部駆動輪(月刊PANZER編集部撮影)。
乗り降りの足掛け用ステップバーも配置(月刊PANZER編集部撮影)。

 この震災工作車以外にも、各地の自治体消防には工夫を凝らした災害工作車があります。探してみるのも楽しいでしょう。

【了】

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Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

5件のコメント

  1. 大型特殊と玉掛けの免許、クレーンの技能講習を受けた人間なんて、建築現場に行けば、何万単位でいるだろう。さほどレアな免許じゃないよ。一日の講習とサルでも受かる簡単な試験で取れる。落すための試験じゃなく講習を真面目に聞いていたか確かめるための試験だからね。

    俺だって免許は持っている。使ってはいないけど。

  2. 小型移動式クレーンと玉掛けも技能講習ですね。

    あとウインチは特別教育です。

    区別しないで「資格」って記述しておけばよかったのに…

    いずれにせよこのへんの資格コンプした人は製鉄所あたりにいっぱいいますよ。

  3. 消防車時代には無かった緩和表示『▽』が。

    車検通すの苦労したのかも。

  4. 珍しいという意味では貴重な車種だろうけど、売りに出されるということは機密がどうこうということはないだろう。

    引っかかれば民間に売る前に解体するだろう。

    飾り物でもあるまいし、ロシアに売り飛ばして仕事をした方がいいんじゃないの?

    その結果を見て使い物になるかどうかを見た方がいいと思うけどな。

  5. 足回りが61式戦車のそれにかなり近いとか何とか聞いたことあり。

    私設博物館の収蔵品候補なのはそこらへんかなと思ってみたり。