唯一無二「震災工作車」 マルチに活躍の救難車両がふたりしか乗りこなせなかったワケ(写真26枚)

一台ウン役のハイブリッド工作車、でも動かすには…?

 こうして、なんとか日本人が落札した震災工作車、外見がとてもユニークです。まず足回りは履帯で、前部には障害物を押しのけるための油圧式ドーザーブレード、上部にはクレーン、中央部にはパワーショベルが搭載されており、後部には電動ウインチが付いています。ほかにも様々な工作機械が使えるように発電機やハンドブレーカーなどの油圧サービスサポート、投光器も用意されている万能ぶりです。機械好きの男の子が見ただけで活躍ぶりが想像できるような「ハイブリッド工作車」なのです。

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変速機のセレクター。見慣れない「ST」とは超信地旋回のこと(月刊PANZER編集部撮影)。

 ほかの自治体にも同じ目的の震災工作車はありますが、ほとんどがタイヤをはいており、履帯式で、しかもハイブリッド装備というのは珍しいです。一応、兄弟車ともいえる「災害特殊工作車」という車両が、かつて千葉県の松戸市消防局にもありましたが、こちらは静岡の震災工作車よりもひと回り小さく、転輪(履帯のなかの円形の部品)もひと組少ない構造です。

 震災工作車を製造したのは建築、土木機械から戦車まで手がける三菱重工で、履帯の構造は自衛隊の73式装甲車と同じコンポーネントが使われた本格派です。左右の履帯をそれぞれ逆回転させて、その場で旋回する超信地旋回も可能です。操縦はU字型ハンドル、2速オートマチックでそれ程難しくはないそうです。

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発電機のアップ。稼動する(月刊PANZER編集部撮影)。
パワーショベルのバケットと交換出来る油圧式のハンドブレーカー(月刊PANZER編集部撮影)。
動かすのに必要な鍵の束。左側の「左前ドア」と書かれたもののほか4本が各扉のキー。右側上が工作車の運転キー、右下がパワーショベルの運転キー(月刊PANZER編集部撮影)。

 しかし実際動かすにはいろいろ気になる点もあります。自動車を動かすキーは普通1台に1本です。ところがこの震災工作車には6本も必要です。4枚あるドアのキーは全部別々、工作車そのものの運転キーとパワーショベルの運転キーも別のもので、合計6本という具合です。特注で1台しか作られなかった事情は分かりますが不便すぎます。

 保安基準は全て満たしており、公道走行は可能ですが、運転するには大型特殊免許が必要です。さらに工作機械を動かすには、大型特殊免許のほかにも小型移動式クレーンと玉掛け免許(クレーン)、車両系建設機械技能講習(パワーショベル)、そしてウインチ講習が必要で、動かす人間にも「ハイブリッド」な技能が求められます。しかしこれだけの免許を持っている人が何人いるでしょうか。当時の静岡市消防局にも2名しかいなかったといわれています。緊急車両としては心もとないような気がします。

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コメント

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5件のコメント

  1. 大型特殊と玉掛けの免許、クレーンの技能講習を受けた人間なんて、建築現場に行けば、何万単位でいるだろう。さほどレアな免許じゃないよ。一日の講習とサルでも受かる簡単な試験で取れる。落すための試験じゃなく講習を真面目に聞いていたか確かめるための試験だからね。
    俺だって免許は持っている。使ってはいないけど。

  2. 小型移動式クレーンと玉掛けも技能講習ですね。
    あとウインチは特別教育です。
    区別しないで「資格」って記述しておけばよかったのに…

    いずれにせよこのへんの資格コンプした人は製鉄所あたりにいっぱいいますよ。

  3. 消防車時代には無かった緩和表示『▽』が。
    車検通すの苦労したのかも。

  4. 珍しいという意味では貴重な車種だろうけど、売りに出されるということは機密がどうこうということはないだろう。
    引っかかれば民間に売る前に解体するだろう。
    飾り物でもあるまいし、ロシアに売り飛ばして仕事をした方がいいんじゃないの?
    その結果を見て使い物になるかどうかを見た方がいいと思うけどな。

  5. 足回りが61式戦車のそれにかなり近いとか何とか聞いたことあり。
    私設博物館の収蔵品候補なのはそこらへんかなと思ってみたり。