「ザ・昭和の観光」な定期観光バス、なぜいま人気 はとバスV字回復、地方でも脚光のワケ

集客のカギは「夜のエンタメ」? 個性派車両も続々

 そのようななか、はとバスは大きな決断をします。地方からの観光客に「ガイドブックで見る東京」を案内するという従来の戦略を転換し、首都圏在住者をもうひとつの重要なターゲットと定め、定番観光地ではないスポットを回るコースを充実させたのです。その象徴が夜のエンターテイメントを楽しむコースであり、ショーパブで「ニューハーフショー」などを楽しむといった体験が人気に。遠方からの観光客を対象とする「東京半日」(皇居や東京タワーを半日で巡るコース)といった定番コースと、主に地元在住者をターゲットにした企画性の大きいコースの2本柱で乗客を集めるようになりました。

 一方、はとバス以外の定期観光バスはどこも苦戦が続いていましたが、近年、その流れが大きく変わりつつあります。

 2004(平成16)年、東京で日の丸自動車興業(文京区)が、2階建てバスを改造し屋根を取り払ったオープントップバスを用いて定期観光バス事業に参入しました。走行中に風が直接入ってくる2階席の開放感は抜群で、レインボーブリッジや都内のイチョウ並木などを巡るコースが人気となりました。

 さらに同社は、陸上を走行するバスがそのまま川や湖に入って船として運航する水陸両用バスも投入。オープントップバスとともに、いまでは東京以外の多くの地域で導入されています。これらのコースは、下車観光はほとんどありません。物見遊山ではなく、エンターテイメント性を重視したことで定期観光バスに新しい価値が付加されたのです。

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水陸両用バス「スカイダック横浜」。みなとみらいを陸と海から観光できる(Goran Bogicevic/123RF)。

 もうひとつの変化は、外国人客の増加です。急増する訪日外国人(インバウンド)は、ここ数年、団体ツアーからFIT(Foreign Independent Tour/個人自由旅行)中心へと変化しています。貸切バスではなく、公共交通を乗り継いで個人旅行を楽しんでおり、そのなかには、訪問先で現地参加型ツアー(着地型ツアー)に参加する人も多くいます。

「総花的で凡庸」な「昭和の遺物」と思われた定期観光バスですが、考えてみれば、現地の観光スポットを効率よく回る着地型ツアーでもあったのです。今後、FITはますます全国の様々な土地を訪れるようになるでしょう。そのとき、定期観光バスが残っていることが、その地にとってFITを集客する要素のひとつになるかもしれません。

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コメント

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2件のコメント

  1. 水陸両用バスによる定期営業運転は「東京が広めた」ではなくて大阪が先ですな……。
    閑話休題、京都の定期観光バスも共同運行の京都市交通局撤退後、「全国各地に知名度を高めたい」京阪グループの京阪バスが必死ですからね。季節運行とは言え、西武グループの近江鉄道バス、近鉄グループの奈良交通、阪急阪神グループの丹後海陸交通と組んで共同運行したり(京阪バスグループによる丹後海陸交通との共同運行はそれこそ路線バス含めて初めてのはず)、地場の貸切バス会社、明星観光バスと組んでスカイバスやってみたり、はてはウィラーのレストランバス売ってみたり。

  2. 他にも平成が終われは復権する昭和の遺物があるかも知れない