【都市鉄道の歴史をたどる】戦時中に行われた「時差通勤」 その効果はあったのか
東京都が「満員電車の解消」を目指して実施している時差通勤キャンペーン。しかし発想自体は新しいものではなく、日本では戦時輸送の改善策として実施されたことがありました。実際に混雑の分散効果はあったのでしょうか。
東京都知事の「肝いり」プロジェクト
東京都が2017夏から推進している時差通勤キャンペーン「時差Biz」は、満員電車の解消を公約に掲げて当選した小池百合子知事の肝いりプロジェクトです。
公式サイトによると、通勤ラッシュの緩和によりストレスから解放され、通勤時間帯の有効活用が可能になり、自己啓発や趣味の時間、家族との時間が増え、働く意欲が向上することで企業の生産性向上にもつながるという、壮大な効果を見込んでいるようです。単なる交通政策ではなく、働き方改革のひとつとして位置付けられていることが分かります。
東京都は利用者と雇用者にテレワーク導入や時差通勤の推進を働きかけるとともに、鉄道事業者に対してはピーク時間帯前後の列車増発や協力者への特典付与を促しています。なかでも混雑率180%以上の路線を抱える東京メトロや東急電鉄、JR東日本では、オフピーク通勤にポイントを付与したり、朝活イベントを開催したりするなどしていますが、いまひとつ盛り上がりに欠けているのは否めません。
そもそも、時差通勤はいつごろ始まり、どのような効果が期待されていたものなのでしょうか。その意外な歴史を振り返っていきます。
そのきっかけは戦争だった
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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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