ローカル線から都市鉄道まで「第三セクター鉄道」そのメリットと課題は

都市とローカル、将来の「可能性」には違いが

 メリットだけでなくデメリットもあります。第三セクターは地方自治体から民間企業まで出資しており、責任の所在が「公」にあるのか「民」にあるのか曖昧になりがち。そのため事業の見通しが甘くなったり、あるいは改善が必要な部分が放置されるなどして、経営をさらに悪化させてしまうこともあります。

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鳥取県の第三セクター鉄道・若桜鉄道は2009年から公有民営方式も導入している(2017年1月、草町義和撮影)。

 もっとも、都市部の第三セクター鉄道は利用者がひじょうに多く、運賃収入も大きいという恵まれた環境にあります。仮に第三セクターのデメリットが原因で経営が悪化したとしても、再建できる可能性は高いといえるでしょう。

 これに対してローカル線を運営する第三セクター鉄道の場合、経営の立て直しは厳しいものがあります。ローカル線の多くは沿線人口の減少に歯止めがかかっておらず、利用者や運賃収入も減り続けているためです。

 会社運営を改善して経費を抑えても、収入が減り続ければ意味がありません。実際、北海道ちほく高原鉄道や神岡鉄道(富山県、岐阜県)など一部の第三セクター鉄道は国鉄時代に比べ運営コストの削減を図っていましたが、それでも利用者の少なさに耐えられず廃止されています。

 近年は自治体が線路や車両を保有して民間企業に無償で貸し付ける「公有民営方式」を導入し、ローカル線の経営改善を図る動きも増えてきました。しかし、この方式も利用者や収入が減り続ける限り、いずれ維持できなくなります。ローカル線の場合は運営方式をどうするかより、沿線人口を増やせるかどうかの方が大きな鍵といえるでしょう。

 ちなみに、国際的には半官半民の組織ではなく民間の非営利団体(NPO)が英語で「the third sector」(日本語に直訳すると「第三セクター」)と呼ばれています。2017年に神岡鉄道のディーゼルカーを動態復元して走らせているのは地元のNPO法人ですが、このNPOも国際的な定義に従えば「第三セクター保存鉄道」といえるかもしれません。

【了】

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コメント

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4件のコメント

  1. trafficnews.jp様
    配信を停止願います。よろしくお願いいたします。

    • あなた、あちこちの記事に同様のコメントをしてるけど、ユーザ登録情報のページから配信のチェック外すなり、ユーザ登録を削除しなさいな
      こんなところにコメントしても、運営側はあなたがどのユーザIDか分からないでしょうに

  2. 鉄道の時代は既に去ったか・・・

  3. そして10周年なのに何故か載らない中之島高速鉄道(京阪中之島線)……。「大阪市営地下鉄中之島線」並のスキームを使われた最初の都市型三セクという名の私鉄路線……。あ、この方式は西大阪高速鉄道(阪神なんば線)でも使われてます。こっちはなんば線好況もあって「じゃあなんで(過去に無理して)千日前線作ったんだ!」状態ですが……。