九州「大都市のローカル線」が廃止された理由 沿線人口は多いはずなのに(写真51枚)

廃止される鉄道路線の多くは沿線人口が少ない過疎地のローカル線です。しかし、九州の福岡市とその郊外を結ぶ勝田線は、沿線人口が多いにも関わらずローカル線として廃止されてしまいました。なぜ廃止されたのでしょうか。

福岡の中心部から郊外に伸びる

 新しい鉄道路線が開業することがあれば、すでにある鉄道路線が廃止されることもあります。

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30年以上前に廃止された勝田線の志免駅跡(2018年7月、草町義和撮影)。

 最近では、2016年にJR北海道の留萌本線・留萌~増毛間16.7kmが廃止。2018年はJR西日本の三江線・江津~三次間108.1kmが廃止されました。2019年にはJR北海道の石勝線夕張支線・新夕張~夕張間16.1kmが廃止される予定です。

 これらの路線の多くは、沿線人口が少ないため廃止されたといえます。人口が少なければ鉄道を使う人も少なく、厳しい経営を強いられるためです。ところが、一部には沿線人口が多いにも関わらず、廃止された鉄道路線があります。とくによく知られているのが九州の勝田線です。

 勝田線は、福岡市博多区の鹿児島本線・吉塚駅から分岐して、志免町を通って宇美町の筑前勝田駅までを結んでいた、全長13.8kmの国鉄線。福岡市の中心部とその郊外を結ぶ路線でした。

 福岡市は九州最大の都市。勝田線が廃止された1985(昭和60)年の国勢調査によると、人口は約116万人で、博多区に限っても約16万人でした。これに対して勝田線沿線の志免町は約3万4000人、宇美町は約2万9000人。両町とも福岡の郊外住宅地として発展するとともに人口が増え続け、2015年には志免町が約4万5000人、宇美町が約3万8000人まで膨れあがっています。

 ところが、勝田線の1日1kmあたりの利用者数(輸送密度)は、1977(昭和52)~1979(昭和54)年度の平均値で840人。勝田線と同じ福岡周辺を通る国鉄線は鹿児島本線(1979年度)が2万7473人、篠栗線(1979年度)が1万1463人、香椎線(1977~1979年度)が2350人でしたから、ひじょうに少ないといえます。

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コメント

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8件のコメント

  1. 住民運動とかはなかったのかな?

  2. 既に、天神直行の西鉄バスの牙城が築かれていたというのもあるのではないだろうか。

  3. 経営的な事情でやむを得ず廃止になったとしても復活できる仕組みを考える時期。
    JRでも西鉄でも福岡市地下鉄でもいいから旅客鉄道として再開できればいいのに。

  4. 国鉄の赤字が理由ではないでしょ?
    単に乗客の伸びが期待できなかったから廃線になっただけ。
    仮に延命していたとしても、問題の先送りに過ぎない。

  5. まだ、こういうこと言ってるよ!
    勝田線は全く使えない鉄道でした。
    そもそも吉塚に向かっているので住民の指向性とは
    全然違う方向につながっているのです。
    利用者は県庁にそんなに行く用事があるのですか(笑)?
    バスを見てください!ほとんどが天神に向かいます。
    そうです、住民は天神への指向性が高いのです。
    博多駅は企業の支店が集積しています。
    そういうところで働く人たちは転勤族です。
    彼らは会社の寮から通勤します。
    大手企業の転勤族の寮や借り上げ社宅が志免や宇美につくられましたか?
    糟屋郡はどんなところ?ときかれると
    福岡インターに近いので物流関係の大規模な倉庫が多いところ、
    それゆえ大型のトラックの交通量が多いところ、
    福岡市に近いので郊外型のマンションや一戸建ての大規模ニュータウン開発が進んだところ
    で何かあるたびに渋滞が頻繁に起きるエリア、
    いわゆるベッドタウン、衛星都市だと
    と答えます。

    現在の宇美駅も使いにくい場所にありますので利用者もなかなか増えません。
    筑前勝田駅跡に住宅は増えましたがとてもとても鉄道を利用するユーザーではありません。
    マイカー族ですから。
    御手洗駅付近など倉庫ばかり立ち並んでいますよ・・・

    わたしは以前から地下鉄の福岡空港駅から1駅延長して
    志免町の中心部まで持ってくればかなり効果はあると思っていました。
    ただ、志免炭鉱の坑道がどのように走っているのかが分からないので
    地価は掘れない可能性もあります。
    最近、地下鉄を長者原駅まで延伸して筑豊から空港直結させろという案があることを知りました。
    なかなか良いアイデアですが、長者原駅付近に分岐する土地があるのかな?とか
    これをやったら志免町にはもう二度と鉄道は来ないなと思いました。

    なお、この記事の
    バスが博多駅へは間違いで天神に向かいます
    筑前参宮鉄道(西鉄)が買収されたのは
    志免炭鉱が海軍(国家)の炭鉱だったからです
    戦後は海軍炭鉱は国鉄炭鉱として経営されて国鉄炭鉱として閉山しました。

  6. 甘木線も福岡から近いところを走るローカル線で勝田線と似たような状態でしたが、甘木鉄道に転換されて大増発して小郡駅を西鉄小郡駅の近くに移転するなど努力して乗客を4倍に増やしました。鉄道で残して良かったケースですね。

  7. これが太宰府まで延伸され,西鉄太宰府駅と共用化されると,今,非常に便利だと思うんだが?

  8. 勝田線は運行本数が少ないまま廃止された例でしたが、
    名鉄や西鉄には、沿線人口も十分あり、頻発運転もされていたのに、廃止されてしまった路線があります。そちらにも問題意識を持って取材していただけるとより発展性があるかも。