九州の高速バス事情 圧倒的本数の「高速バス王国」、観光地路線も盛況 競争さらに激化

競争激化の「対本州」、長距離夜行は縮小傾向

 1988(昭和63)年に高速バスの福岡~宮崎線「フェニックス号」が開業した当時、バスに乗って週末に地元宮崎から福岡へショッピングやコンサートのために出かける若年層が、当時の新聞などで「フェニックス族」と呼ばれました。バブル期には九州内に新路線が続々と生まれており、それらが各県で「福岡への足」として認識され定着したことの、ひとつの象徴といえるでしょう。また、各県の人口も比較的大きいことから、宮崎~鹿児島、熊本~長崎など福岡以外の都市を直接結ぶ路線も相当数運行されています。

 一方、本州や四国とを結ぶ、主に夜行の長距離路線は、1983(昭和58)年に開業した「ムーンライト号」(福岡~大阪)から始まりました。同路線は、「共同運行制(西鉄と阪急バス)」「3列独立シート」など新しい取り組みが成功し、全国のバス事業者が追随。これを追いかけるように九州各県と京阪神や名古屋を結ぶ各路線、さらには片道1000kmを超え福岡と東京を結ぶ「はかた号」も登場します。このころには、西鉄の子会社、西日本車体工業が製造するバス車体が九州各社を中心に導入され、特に夜行路線用の車両には居住性を高めるための細かい工夫がなされていた点も、人気に貢献しました。

 そして2002(平成14)年に「高速ツアーバス」と呼ばれる事業形態(乗合バスではなく旅行商品のいち形態)が容認されると、主に福岡~京阪神へ新規参入が相次ぎました。

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由布院駅前バスセンターにて。左が西日本車体工業製のバス、右はヒュンダイ製の「ユニバース」(成定竜一撮影)。

 しかし、近年、全国的に長距離夜行路線を取り巻く環境が変化しています。九州新幹線の延伸開業(新大阪~鹿児島中央間の直通運転開始は2011年)など新幹線網の拡充、LCCの参入(ピーチ・アビエーションの福岡~大阪線就航は2012年)および航空運賃割引の多様化が進み、長距離移動における高速バスのシェアが低下しました。

 福岡~京阪神では、以前から運賃面でフェリーとの競争がありましたが、航空運賃割引の多様化を受け、山陽新幹線にも使い勝手のいい割引運賃が設定されたことが、競争に拍車をかけたのです。一時は3往復体制となった「ムーンライト号」は、周辺路線と統合を重ね延命したものの、2017年に実質的に廃止となるなど、長距離夜行路線の廃止が相次いでいます。

 もっとも、全国的に見て長距離夜行路線の便数は高速バス全体の約1割に過ぎません。夜行便はもともと収益性に劣ることもあり、各社とも「高速バス市場の本丸」である昼行路線に注力しています。しかし九州では、その昼行路線にも変化が生まれています。

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コメント

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1件のコメント

  1. それより何より、問題なのは運転士不足。
    運転士がいなければバスは運行できない。