「都会のローカル線」南海汐見橋線に乗ってみた 「幻の関空連絡鉄道」の将来は(写真89枚)
実は利用者が増加している
ただ、1980年代には、梅田方面からJR阪和線方面と南海線方面に短絡して関西空港へのアクセスを強化する地下新線「なにわ筋線」の構想が浮上。なにわ筋線と南海線は汐見橋駅で接続させ、汐見橋線経由で関西空港に向かうルートを整備することが考えられました。1990(平成2)年には、なにわ筋線の整備にあわせて汐見橋~木津川間を地下化する構想を南海が明らかにしています(1990年8月17日付け朝日新聞大阪朝刊)。
こうして汐見橋線は、空港アクセス輸送を担う幹線鉄道として「復活」するはずでした。ところが2000年代に入ると、難波でなにわ筋線と南海線を接続させる案が浮上。「汐見橋接続案」はほぼ中止に傾いており、「都会のローカル線」から脱却する機会を失ったのです。
現在の汐見橋線は、利用者が少ないまま推移しています。南海が公表している駅別の1日平均乗降人員(2017年度)によると、汐見橋駅は602人で、難波駅(25万4694人)の423分の1しかありません。中間駅はさらに少なく、最も利用者が少ない木津川駅は123人。これは高野線の山岳区間にある高野下駅(101人)より、少し多い程度です。
ただ、近年は汐見橋線の利用者が増えています。大阪府の統計資料によると、汐見橋駅の1日平均乗降人員は2008(平成20)年度が364人だったのに対し、2016年度は575人。数百人台という状況に変化はないものの、8年間で1.6倍です。南海は取材に対し「利用者が増えているのは確かですが分析したことはなく、増加の理由も分かりません」と話しました。
記者の推測ですが、2009(平成21)年には汐見橋駅の近くに阪神なんば線の桜川駅が開業しており、これが関係しているのかもしれません。阪神線方面から南海線方面への短絡ルートとして、汐見橋線を使う人が少し増えたのでしょうか。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
阪神なんば線の桜川駅、思い切り汐見橋交差点にあるというのに、どうして駅名を「桜川」にしたんだろうか。。。南海の汐見橋駅がなくなるのを見越して千日前線の駅名と同一にした方が賢明と判断したのだろうか。