どっこい生きてる「現役SL」 中国の炭鉱で捉えた「建設型」蒸気機関車

蒸気機関車は動態保存運転を除いて日本でも海外でもほとんど見られなくなりましたが、中国の新疆ウイグル自治区にある三道嶺の炭鉱では、いまも「現役」の蒸気機関車が運行中。しかし、その姿ももうすぐ見られなくなりそうです。

保存目的ではない「道具」としての運行

 いまでは保存が目的の運転しか行われていないイメージがある蒸気機関車。それは海外の鉄道も同じですが、中国の三道嶺(サンダオリン)では、いまも蒸気機関車が「現役」で使われています。

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三道嶺で活躍する建設型蒸気機関車。車体の汚れは「現役」蒸気機関車であることの証(2016年12月、伊藤真悟撮影)。

 三道嶺は、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の東部にある炭鉱の街。ここでは露天鉱で掘り出された石炭を、「選炭場(せんたんじょう)」と呼ばれる積み卸し施設まで列車で運んでいるほか、工場とのあいだで物資も運んでいます。この列車をけん引しているのが蒸気機関車。走らせること自体が目的の保存運転と異なり、物資を運ぶための「道具」として、蒸気機関車を使っているのです。

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石炭を積んで選炭場へ向かう蒸気機関車(右)と、露天鉱の脇にある積込場へ向かう蒸気機関車(左)がすれ違う(2016年12月、伊藤真悟撮影)。

 日本の東京から三道嶺までの距離は、直線でも約4000km。まず東京から北京に飛んで北京で1泊します。当日にウイグル東部の都市・ハミへ向かう飛行機に乗り継げないためです。翌朝に北京から飛行機でハミへ。さらにハミから約90kmの道のりをチャーターしたバスに揺られ、やっと三道嶺に到着。全体の所要時間は正味28時間もかかります。

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三道嶺の位置(乗りものニュース編集部作成)。

 北京からハミまでは列車を使うこともできますが、その場合はさらに時間がかかります。北京駅を午前10時に発車するウルムチ行きの特快列車Z69次に乗った場合、ハミ駅に着くのは「翌日」の12時21分。所要時間は26時間21分です。列車の場合も当日中に乗ることができませんので、北京での1泊が必要となります。ですので、東京を出発してから「翌々日」の到着です。

 冬の三道嶺は、気温が最低でマイナス20度近く。最高でも氷点下であることが多く、風も強く吹く過酷な場所です。服装もそれなりに対応したものでなくてはなりません。また、三道嶺で運転されている列車は、民間会社が所有しています。撮影するにはその会社の許可が必要です。

デゴイチと同じ軸配置

 三道嶺で使われている蒸気機関車の形式は「建設型」。1950年代から1980年代にかけて約1500両が製造されました。もともとは貨物列車用のテンダー式蒸気機関車です。

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中国の蒸気機関車は動輪が赤く、前面には「カウキャッチャー」を装着(2019年1月、伊藤真悟撮影)。

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