これ駅弁!? 見た目や中身にサプライズな駅弁5選 「まるごとサバ」に「たまご一色」ほか
「サバまるまる1本」駅弁!?
駅弁のなかには、その土地の郷土料理をモチーフにしたものが少なくありませんが、それゆえに、駅弁らしからぬビジュアルになってしまったものもあります。
中村駅(土佐くろしお鉄道)「姿寿司」
「姿寿司」は足摺岬周辺で水揚げされる「清水サバ」をまるまる1尾使った姿寿司で、開いたサバの身のなかに、ご飯がぎっしり詰まっています。このような姿寿司は高知駅などでも販売されていますが、中村駅(高知県四万十市)のものの特徴は、その大きさです。ワインボトルほどの箱のなかに、ひと切れのすだちとともに、1尾がサバの姿のままラップにくるまれて収まっています。
高知県では「皿鉢(さわち)」という大皿料理の文化があり、このようなサバなどを1尾まるまる使った押し寿司が出されることは珍しくありませんが、本来は複数人で食べるものをひとつの駅弁としているだけあって、2~3人前かと思うくらいの重さです。身の味わいは尾と腹などで違うほか、季節によっても風味が異なります。なお、購入には中村駅へ3日前までに電話で予約が必要です。
八戸駅「八戸小唄寿司」
八戸駅(青森県八戸市)の「八戸小唄寿司」は、サーモンやサバなど、八戸沖の魚を使った押し寿司ですが、実は箸がついていません。代わりに入っているのは、なんと津軽三味線のバチをモチーフとしたもので、押し寿司を切り分けて食べます。この駅弁は、昭和30年代に当時の八戸市青年部の若者が「地元の名物になる商品を」と開発したロングセラー商品です。ちなみに、このバチで津軽三味線が弾けるかは不明ですが、試したところギターピック代わりになる程度の強度はあります。
鹿児島中央駅「桜島灰干し弁当」
鹿児島中央駅の「桜島灰干し弁当」は、細長い長方形の容器に、干物の魚をはじめ様々な料理がバランスよく盛りつけられたもの。これまで紹介してきた駅弁のような見た目のインパクトはありませんが、大きな特徴は、魚の干物の作り方にあります。一夜干しした魚にフィルムをかぶせ、桜島の火山灰で包んで水分を吸わせる「灰干し」という、この地域ならではの製法によるものです。なお、干物を含め具材の内容は定期的に入れ替わりますが、この駅弁の人気自体は不動のものといえ、数々の人気投票で1位を獲得しています。
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このように「サプライズ駅弁」の多くは、地域色を追求した結果といえるでしょう。中身だけでなく、容器で地域色を出すような駅弁も少なくありません。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
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