JR東海「安全本質学修館」に潜入 事故再現VR、宙づり・ドア挟み体験などで安全学ぶ
在来線車両の検査、修繕を行うJR東海名古屋工場の訓練施設「安全本質学修館」。ドアに手を挟んだり、列車に接触したりしたときの「体験」ができるよう、様々な設備が導入されています。
「ルールの本質、意味」を学ぶ
JR東海は2019年7月5日(金)、同社の名古屋工場(名古屋市中川区)内にある訓練施設「安全本質学修館」の訓練施設を報道陣に公開。JR東海の新入社員が様々な訓練を受けていました。
館内にはあるのは、様々な体験訓練設備です。車両の乗務員用ドアに挟まれたときにどうなるかを体験する「乗務員扉 狭窄体験装置」では、模擬の手をドアに挟ませたところ、手のなかに入れていた割り箸がポッキリと折れました。JR東海の関係者によると、割り箸の強度は人間の骨とほぼ同じといいます。
また、社員は「安全帯つり下げ体験訓練」の器具を使い、実際に安全帯でつり下げられた状態を体験。すぐ下にマットがあり、数cmほどの高さで宙づりになりました。高所作業では転落事故の防止のため、現場の状況によって安全帯の着用が法令で義務づけられており、JR東海は「この体験を通して転落事故防止のためのルールを守る」ことが訓練の目標としています。
このほか、仮想現実(VR)技術を活用した訓練設備もありました。これは現実的に再現不可能な事故を体験するためのもの。社員が装着したVRゴーグルには「車両基地内の線路に工具が落ちている」という想定の映像が映し出され、その工具を社員が拾おうとしたところ、車両が近付いてきて接触します。
現実には、そこに車両はありませんが、訓練後に社員は「死んじゃうんじゃないかと思うほどの恐怖感があった」と話していました。JR東海はこれにより、線路を渡るときの指差し確認が重要であることを学ばせるといいます。
館内ではほかに、エンジンなど車両に使われている機器のカットモデルを展示。通常の検査では見ることができない内部の構造を見られるようにしています。
名古屋工場はJR東海の在来線12線区で使われている車両の大掛かりな検査や修繕を行っている工場です。安全本質学修館は2019年3月に開設。車両の検査や修繕に携わっている社員約700人を対象に、安全確保に関わる訓練を行います。
JR東海 東海鉄道事業本部車両部管理課の糸山雅史課長は「安全を守るためのルールには、そのルールが定められた本質、意味があります。体感訓練を通じてルールの意味を学び、車両の検査業務に生かしていきたい」と話しました。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
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