ガラケーからスマホへ パイロットから見た海自P-1哨戒機の、P-3Cからの進化とは?
海上自衛隊は、洋上の監視などを主任務とする哨戒機としてP-3CとP-1とを運用していますが、両者の初飛行には50年もの差異があります。その半世紀のあいだにどれほどの進化を遂げたのでしょうか、現役パイロットに聞きました。
最大の違いは「中身」にあり
「P-1とP-3Cは、たとえていうならば黒電話やガラケーからスマホ、ファミリーコンピュータからプレイステーション4、そのくらい違いがあります」
2019年現在、海上自衛隊の航空部隊は大きな変革期を迎えています。その主力機P-3C「オライオン」哨戒機は1981(昭和56)年に導入を開始、長きにわたり日本の海の安全を守ってきました。しかしながらP-3Cももはや「アラフォー世代」、寿命を迎えた機が次々と現役を退きつつあり、その代替として現在は新しい国産の、P-1哨戒機の配備が進んでいます。
海上自衛隊の厚木航空基地(神奈川県)第4航空群第3航空隊に所属(取材当時)する諸隈宣亮(もろくまのぶあき)1等海尉は新型哨戒機P-1の操縦士であり、かつてはP-3C哨戒機の機長でした。冒頭の言葉は、パイロットという立場から見てP-3CとP-1の違いはどこにあるのかという質問に対する、諸隈1尉の回答です。
P-1とP-3Cにおける外見上の違いは、なんといってもプロペラ(ターボプロップエンジン)からジェット化(ターボファンエンジン)されたことです。これにより進出速度や巡航高度は大きく向上していますが、諸隈1尉のいう「ガラケーからスマホ」とは、ジェット化による飛行性能の向上ではなく、外からではわからない「中身」が変わったことを意味しているようでした。
「もちろんジェットになったことによる機動力に関しての有利は感じています。『ガラケーからスマホ』とは、これまですべて手動でやっていたことを自動化してくれた点などにあります。P-1もP-3Cも基本的な操縦方法は同じですが、たとえばP-3Cでは旋回のため機体を左右に傾けると、そのぶん航空機を支える力が減ってしまうので操縦桿を引く『引き操舵』を行い、機首をわずかに上向きとし、また機体の横滑りを補正するラダーペダルを踏みこむ必要がありますが、P-1ではこうした操作を、すべて機体がやってくれるようになり、ただ機体を傾けるだけで旋回できるようになっています」
「すべて機体がやってくれる」というのは、実はP-1の「操縦」は、すべて飛行制御コンピューターが行っているからです。
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