ガラケーからスマホへ パイロットから見た海自P-1哨戒機の、P-3Cからの進化とは?

進化する機体と変わらぬパイロットの役割

 ガラケーからスマホへ、マニュアル車からオートマ車へ、コンピューター制御によって操縦が楽になったP-1は、機を動かすだけならば誰でもできるようになっています。ただ、これはもちろん「誰でもパイロットができる」ということを意味するものではありません。哨戒機パイロットの仕事は、機の安全に責任を持つことはもちろん、「11名のP-1搭乗員」というひとつの「チーム」を統率する指揮官でもあるからです(戦術航空士がパイロットより階級が上の場合は、戦術航空士が指揮官となることもある)。

「操縦だけではなく、作戦を実行したり、各クルー全員が能力を発揮できるようコーディネート(調整)したりするような役割も非常に重要となります。P-3Cの時は、操縦しながらそれもやっていました。P-1ではオートパイロットが使えるなど操作に関しては余裕ができたところはありますが、パイロットの役割自体は変わっていません。こうした部分はやはり、訓練で培っていくところが大きいのかなと思います」(諸隈1尉)

 誰でもできる作業はコンピューターへ任せてしまい、人間は作戦を考えたり、決断を下したりといった“人間にしかできない作業”に、より集中することで総合的な能力を高めるというわけです。近年の著しいIT化は、P-1という飛行機における「お仕事」においても大きな恩恵をもたらしているようです。

Large 190710 p1 03

拡大画像

離陸前の点検を行う諸隈1尉。ジェット哨戒機であるP-1は進出速度などに優れる。また機内はとても静かであるという(関 賢太郎撮影)。

 最後に、諸隈1尉にとって海上自衛隊のP-1パイロットという仕事を志願した理由とその魅力、また、パイロットになりたい若者へのアドバイスを貰いました。

「私の兄も海上自衛官であり、いまも艦艇に乗り組んでいます。それがきっかけで海上自衛隊のヘリコプターに乗せてもらう機会がありました。そのヘリのパイロットから『パイロットになるなら海上自衛隊の方がいいよ』と言われたことで、パイロットを目指すようになりました。なぜ海上自衛隊が良いのかまでは言われませんでしたが、いまは海上自衛隊の固定翼(飛行機)部隊のパイロットとして、訓練だけではなく毎日任務として最前線で飛行しているところに誇りを感じています」

 そしてパイロットを志望する若者に向け、「『絶対にパイロットになるんだ』という強い気持ちだけは持ち続けてもらいたいなと思います。強い気持ちさえあれば、同じ志を持つ同期同士で励まし合って、色々教え合うなど一緒にがんばる事ができます」とし、インタビューを締めくくりました。

【了】

【写真】どう飛んでいるか直感的にわかるP-1の「飛行計器表示(PFD)」

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。