駅名は公園、女子大、中学校… 千葉北部の環状線、山万ユーカリが丘線に乗ってみた
街と一体の路線、外側に住居、内側に緑地
公園駅以上にインパクトがある駅名を有しているのは女子大駅です。駅前に大学があるから?と予想したところ、実際には大学のセミナーハウスこそあれ、大学そのものは存在しませんでした。「街に大学を誘致したい」という意図から名付けられたようです。ちなみに中学校駅は、駅を出て目の前に中学校がありました。
また、沿線は戸建てあるいはマンションが数多く立ち並んでいながらも、空き地があちこちに見られます。一般的にニュータウンというと、高齢化に注目が集まりますが、ユーカリが丘ではあえて毎年の分譲戸数を200~300戸に抑えることで年齢層のバランスを保っています。さらに、前述のように車窓の右手、つまり環状線の外側に住宅が立ち並ぶ一方で、内側には畑などが見られるのも特徴的ですが、これは街の中心を農地、緑地として保全しているためです。
加えて駅間距離が短く、一番離れている公園~女子大間でも900mしかないため、全区間を通して列車はゆっくり走ります。これは、どこに住んでいても「駅まで10分以内」を達成するためのもの。地域住民を主眼に置いた路線だとわかります。ただ、このようなつくりであることから、公園駅以外にはお手洗い設備がありません。
日中は、地元の主婦層や高齢者層の利用が目立ち、地域外の利用者と思しき人はほぼ見かけませんでした。また、駅でも若い親子連れと高齢の男性が親しげに会話していたり、下車する人と乗車する人がわずかな間に挨拶を交わしていたりと、コミュニティが確立していることが伺えました。
このように「街づくりの一環」としての存在であるユーカリが丘線は、開業以来一度も事故を起こしたことがありません。1周およそ14分のショートトリップですが、ほかとは異なる景色が見られます。
【了】
Writer: 蜂谷あす美(旅の文筆家)
1988年、福井県出身。慶應義塾大学商学部卒業。出版社勤務を経て現在に至る。2015年1月にJR全線完乗。鉄道と旅と牛乳を中心とした随筆、紀行文で活躍。神奈川県在住。
> 一方、これからユーカリが丘線に乗ろうとする人は……私ひとりでした。
1人だったって煽っておきながら、結局5人いたのかよ。