艦対空ミサイルなぜ垂直発射式が主流に?海自艦艇も続々、そのもっともな理由

護衛艦のランチャー、動くぶんが無駄

 海上自衛隊で初のミサイル搭載護衛艦となった「あまつかぜ」とたちかぜ型護衛艦3隻は、艦尾に旋回式ランチャーを装備しましたが、艦の前方から迫ってくる対空目標に対しては、ランチャーの前にある煙突やマスト、艦橋が射撃できる範囲を遮ってしまっていました。そのため次世代のはたかぜ型護衛艦では艦首にランチャーを装備するようになったのですが、そうなれば、今度は艦尾から飛んでくる対空目標への対応で艦上構造物が邪魔になります。

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共同演習で、標的に向けてミサイルを放つスペイン海軍フリゲート艦のMk13発射機。日本のはたかぜ型護衛艦も同じものを搭載している(画像:アメリカ海軍)。

 その点、VLSすなわち垂直発射式ならば、発射装置が前にあろうと後ろにあろうと、まずミサイルを上に向けて射出し、その後、向かってくる標的の方向に向けて誘導すればよいので、射撃可能範囲の制限問題はクリアできます。

 加えて、艦対空ミサイルが標的とする対象に弾道ミサイルが加わったことも、VLSへの転換を推し進めたといえるでしょう。

 弾道ミサイルなどはマッハ10以上の速度で飛びます。マッハ10とは1秒間に約3.4km進む速さです。一方、たとえばはたかぜ型護衛艦が搭載する旋回式のMk13ミサイル発射機は、ミサイルをランチャー下にある弾薬庫から出し発射機に装てん、ランチャーを目標方向へ回す、という発射までの一連の動作に2秒から3秒かかります。そのあいだに弾道ミサイルは7kmから10km程度飛翔します。このタイムラグがVLSならありません。

 次弾発射までに要する時間も大きく違います。前述のMk13ミサイル発射機の場合、次弾を装填するために、一度、元の位置に戻さなくてはなりません。そして弾薬庫からミサイルを出し装てん、向きを変え発射というステップを踏むため、前弾の発射からここまでおよそ7.5秒かかっていました。海上自衛隊のイージス艦が装備するVLSタイプのMk41なら、1秒1発の間隔で連続発射が可能です。この発射間隔の短さはVLSの大きなメリットです。

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