艦対空ミサイルなぜ垂直発射式が主流に?海自艦艇も続々、そのもっともな理由

地対空ミサイルや弾道ミサイルもVLS

 ミサイルの垂直発射方式は、海の上だけにとどまりません。地対空ミサイルの世界でも主流になりつつあり、日本では陸上自衛隊の「03式中距離地対空誘導弾」が垂直発射式です。

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ランチャーを垂直に立てた03式地対空誘導弾の発射装置。ランチャーは回らない(画像:陸上自衛隊)。

 一方、地上で弾道ミサイルの迎撃にあたる、航空自衛隊のパトリオット地対空ミサイルPAC-3形態は、イージス艦とともに弾道ミサイル防衛の主装備と目されていますが、ランチャーに限っては旧式の旋回タイプです。パトリオット地対空ミサイルの開発は1970年代で、原型のA型がアメリカ陸軍に引き渡されたのは1984(昭和59)年と、登場からすでに35年が経過しています。そのアメリカが、パトリオットの一部後継として開発した新型のTHAAD(サード)ミサイル発射装置は、限りなく垂直発射に近い非旋回式ランチャーです。

 なお、VLSには「ホットローンチ」と「コールドローンチ」の2種類があり、呼称のとおり、前者は発射機内でミサイルに点火し、後者は発射機から出た後でミサイルに点火する方式です。

「ホットローンチ」は、発射機から飛び出すまでの段階もミサイル自体の推進力のみで済むため、別の射出装置が不要なのが長所ですが、欠点として排気炎やガス、煙を逃す煙路が必要なのと、発射機を耐熱性にする必要があります。また、ミサイルを収めている筒は使い捨てです。

「コールドローンチ」は、煙路の設置や発射機の耐熱性などは不要ですが、一定の高度までミサイルを射出するための装置が必要で、そのため構造が大型化します。一方で秘匿性と安全性が高く、潜水艦の弾道ミサイルや巡航ミサイル発射装置などでは昔から使用されています。

【了】

【写真】似ているけど違うパトリオット

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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