艦対空ミサイルなぜ垂直発射式が主流に?海自艦艇も続々、そのもっともな理由

機械のメカニカルな動きには目を奪われますが、兵器の世界では目で追える時点で無駄な動きになるかもしれません。たとえばミサイル発射装置、超音速で飛来する目標へ対応するため、コンマ1秒単位で時間短縮の努力が重ねられています。

海自イージス艦はすべて「VLS」

 2020年3月、海上自衛隊に新型イージス艦の「まや」が、翌2021年3月には「はぐろ」が相次いで就役する予定です。これらと入れ替わる形で、これまで艦隊防空任務に従事してきた、はたかぜ型護衛艦の2隻は練習艦に転籍する予定です。

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訓練で艦橋前方のVLSから対空ミサイルを発射する海上自衛隊の護衛艦「こんごう」(画像:アメリカ海軍)。

 対空ミサイルの発射方式を比較すると、古いはたかぜ型護衛艦は艦首の旋回式ランチャー、すなわち、ミサイルを装てんした部分が回転し標的方向を向いてから発射するというもので、最新のまや型護衛艦はVLS(垂直発射システム)、すなわちミサイルはまず垂直方向に打ち上がり、ある高度に達したのち標的方向へ向く、というものです。海上自衛隊のイージス艦はもれなくVLS搭載で、加えてイージス艦より小さい護衛艦についても、むらさめ型以降の新しい護衛艦では、VLSの搭載が当たり前となりつつあります。

 この流れは日本だけでなく、世界的に見ても旋回式ランチャーは数を減らしていて、新造艦の主流はVLS装備となりつつあります。なぜそうなりつつあるのか、実は旋回式ランチャーには、大きな欠点があるからです。

 それは、目標に旋回式ランチャーを向けようとした場合、艦上の構造物や僚艦などに遮られてしまうことがある点です。実際、1982(昭和57)年の「フォークランド紛争」で、イギリス海軍のフリゲート艦「ブロードソード」は、向かってくるアルゼンチン空軍のA-4攻撃機を迎撃しようと、対空ミサイルのランチャーを対象へ向けたものの、退避行動中だった味方駆逐艦「コヴェントリー」の艦影にさえぎられて撃てず、結果「コヴェントリー」はA-4攻撃機の爆撃を受けて沈没しました。

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