「相鉄・JR直通線」開業 一番列車で出発式 短い新線と既存ルートで東京へ
将来は名古屋や大阪へも短縮効果
戦後の日本は経済成長に伴い、東京などの大都市で通勤列車が激しく混雑するようになりました。これを解決するため、都心では地下鉄の新線を多数建設。郊外にはニュータウンが整備され、都心とニュータウンを結ぶ新線も建設されました。しかし、時が進むにつれて地価や建設資材、人件費が高くなり、新線の建設は難しくなりました。
そこで、既設の貨物線に通勤列車を走らせたり、近接する鉄道を短い新線で接続して直通列車を走らせたりするなど、できるだけ費用を抑える形で鉄道の改善が図られるようになりました。国は2005(平成17)年、短い新線を建設するための補助制度を創設。相鉄・JR直通線は、この制度の第1号路線として建設されたのです。
相鉄・JR直通線の総事業費は約800億円。しかし、相鉄・JR直通線の原型となった1960年代の構想は、相鉄線のエリアから東京方面に直通する全長約30kmの新線でしたから、それに比べれば大幅に短く安い費用で東京への直通が実現できたといえるでしょう。ちなみに、全長約60kmのつくばエクスプレス線の建設費は約9400億円でした。
なお、2022年度下期には、相鉄・JR直通線を延伸する形で、羽沢横浜国大駅から東海道新幹線の新横浜駅(横浜市港北区)を経由して東急線の日吉駅(同)までを結ぶ、全長10kmの「相鉄・東急直通線」が開業する予定。この路線も「短い新線で直通化」の補助制度を使って建設中です。
これが完成すると、西谷~羽沢横浜国大~新横浜間は「相鉄新横浜線」、新横浜~日吉間は「東急新横浜線」として運営され、相鉄線と東急線の直通運転も始まります。単に相鉄線から東京方面への直通ルートが増えるだけでなく、東海道新幹線へのアクセスも改善されます。全長約12kmの新線建設の効果は、数百km先の名古屋や大阪まで及ぶことになるでしょう。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
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