小田急多摩線延伸計画 予定地のいまとダイヤを予想する
町田市と相模原市から公表された「小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書」。小田急多摩線延伸部の具体的な計画やそれを元にした収支予測などが記載されています。この報告書を基に、延伸後の予想ダイヤを作成してみました。
小田急多摩線延伸区間は2033年開業を想定
2019年5月に「小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書」(以下「報告書」)が東京都町田市及び神奈川県相模原市から公表されました。報告書には小田急多摩線延伸部の具体的な計画やそれを元にした収支予測などが記載されています。今回は報告書を基に小田急多摩線の延伸予定地を実際にたどるとともに、現状のダイヤをベースにした予想ダイヤを作ってみました。
まず、小田急多摩線延伸事業について概略を説明します。
小田急多摩線の延伸部は唐木田駅から上溝駅までの8.8kmをさします。新規建設区間は唐木田駅の南側にある車両基地部を除いた8.3km。うちトンネルが6.8km(地下駅含む)と全線の8割以上を占めるのが特徴です。また、駅間も長く設定されています。
駅は「唐木田」(東京都多摩市)、「中間駅(名称未定)」(同町田市)、「相模原」(神奈川県相模原市中央区)、「上溝」(同相模原市中央区)の4駅が設けられ、このうち「相模原」駅のみ地下駅の予定です。軌間は1067mm、建築限界は小田急に準じます。設計最高速度は100km/hで、最急勾配は25パーミルとして考えられています。
着工は2026(令和8)年度、建設期間は6年間で2033(令和15)年開業を想定しています。
整備後の運営は上下分離方式で行われ、インフラ部を沿線自治体などが出身する第三セクターが保有し、実際の運営を小田急電鉄が行うことが想定されています。
では、次に予定地の沿線がどのようになっているか見ていきましょう。
唐木田駅から南側の車両基地の端を抜け、トンネル5本と橋梁5本で多摩丘陵と間にある谷戸を抜け、名称未定の中間駅へ至ります。
この間は鶴見川源流ゾーンや谷戸山ゾーンとして自然が保護されているところで、実際に現地に行くと、東京都内とは思えないのどかな谷戸地形をみることができます。
こうした風景は多摩ニュータウンの原風景でもあり、重要な景観です。そのため、延伸工事でも谷戸山ゾーンにはできるだけ影響を与えず、かつ鶴見川源流ゾーンにはかからないよう環境に配慮したルートになっています。実際の工事においても環境に配慮した工事が進められていくものと思われます。
このようなところではよく、環境保護を理由に開発事業の反対運動が行われますが、現状では小田急多摩線延伸計画に対して大きな反対運動は沿線でみられず、むしろ早期整備を求める幟が目立ちました。
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Writer: 鳴海 侑(まち探訪家)
1990年、神奈川県生まれ。私鉄沿線で育ち、高校生の時に地方私鉄とまちとの関係性を研究したことをきっかけに全国のまちを訪ね歩いている。現在はまちコトメディア「matinote」をはじめ、複数のwebメディアでまちや交通に関する記事を執筆している。