海上自衛隊が使った唯一の旧海軍駆逐艦 護衛艦「わかば」の数奇な人生

太平洋戦争に敗戦した日本は、残っていた戦闘艦艇のほとんどをアメリカやソ連などに引き渡しましたが、そののち発足した海上自衛隊に旧日本海軍の駆逐艦が1隻だけ再就役しました。どのような経緯で護衛艦に転身できたのでしょうか。

沈没艦の再使用 整備で苦労し国会でも追及

 駆逐艦「梨」は沈没から約9年経っていましたが、状態は良好だったため、防衛庁(現在の防衛省)が引き取ることを表明、翌年の1955(昭和30)5月から広島県呉市の造船所で復旧工事を実施しました。こうして1956(昭和31)年5月31日、警備艦(後に護衛艦に改称)「わかば」と命名されて、発足間もない海上自衛隊に再就役しました。

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駆逐艦「梨」とほぼ同時期に竣工した同型艦の「初桜」(画像:アメリカ海軍)。

 ただし「わかば」は、引き揚げ時の状態がよかったといえ約9年も海水に浸っていたので不具合が多く、蒸気タービンやボイラーなどの機関部は整備してもすさまじい雑音が消えることはなかったそうです。

 また「わかば」として復旧させるにあたり、引き揚げた民間企業に対して、くず鉄としては高値である約9億円を支払いました。これは2020年現在の価格に換算すると約18億6300万円です(日本銀行調査統計局「企業物価指数」を基に算出)。またそれとは別に沈没地点の漁業協同組合に対して約160万円、こちらも現在の価格に換算すると約331万円(同)を、それぞれ税金から拠出し、そのことが国会で問題視されました。

 しかも「わかば」として再就役した1956(昭和31)年当時、すでに戦後に設計建造された国産護衛艦が就役し始めており、さらなる新型護衛艦の建造も計画されるなかで、あえて沈没艦を再使用する意義も問われました。

【写真】再就役直後 武装もレーダーもない状態の警備艦「わかば」

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