新幹線との違いに衝撃 そして空港で失った台湾高速鉄道の思い出 交錯する700Tと700系
日本の新幹線技術を導入している台湾高速鉄道。700系新幹線とその兄弟車700Tの“まちがい探し”は楽しいものでしたが、思いもよらない違いもあり、その落とし穴へはまってしまいました。そして帰国時、台北の空港でも……。
出先で生まれた隙間時間 どう使うか?
海外へ出かけることになったとき、やっぱり自分は鉄道が好きなんだなぁと、改めて思います。
鉄道以外の取材で、私(恵 知仁:鉄道ライター)は海外へ行くことがしばしばありますが、そのとき毎度考えるのは、「隙間時間で触れられる鉄道はないだろうか」。早起きすればここまで行けそうだとか、せめて駅には行ってみようだとか、思うわけです。そして、そういう思考に夢中になっている自分に、改めて気付かされるわけです。
もっとも、その行先が日本国内だったとしても、私は隙間時間で駅に出没したり列車に乗ったりしているわけですが、それはさておいて2014(平成26)年11月、業務に関係し、台湾へ初めて出かけることになりました。
そして、思考の進路が「台湾で何に乗れるか乗りたいか」の方向へ自動的に構成され、時間とコストと欲望の落とし所を探った結果、日本の新幹線と深い関係がある「台湾高速鉄道」に乗ったのですが、欲望には落とし穴もあったのです。
台湾高速鉄道700T 初めてだけど初めてじゃない 不思議な感覚
乗車したのは、台湾南部の高雄市にある左営駅から、台北まで、当時の全線およそ340km。日本の700系新幹線をベースに開発された700T電車を初めて見て、自然と“まちがい探し”を始めてしまいます。
まず参考までに、700系新幹線の普通車車内の写真を(JR東海のC編成)。喫煙車のため、荷棚に空気清浄機があります。
続いて、台湾高速鉄道700T普通車車内の写真です。
この、違うんだけど、まったく別ではない感じ。上から眺めたときよりも、座ったときの目線のほうが、イスや窓の形がほぼ同じように見えるからか、700系新幹線の“血”を強く感じさせます。
雰囲気は、よく乗ったことがある700系のそれっぽいものの、見慣れないものがある車内。シャッターボタンを押す指が止まりません。
台湾高速鉄道700T 台北行き202列車の商務車で
さて、このとき私は左営駅を14時30分に発車し、終点の台北駅へ16時06分に到着する202列車へ乗車。新幹線のグリーン車に相当する商務車(ビジネス車両)を利用しました。
左営駅を発車したしばらくしたのち、アテンダントから無料のソフトドリンクとお菓子(クランベリーケーキ)が提供されました。ここも日本の新幹線グリーン車とは異なり、なにやら楽しくなってきます。そして「台湾高鉄」のロゴが入った水のペットボトルに、なんだかうれしくなってきます。
しかし、このあと「新幹線とは異なること」に衝撃を受けるとは、つゆにも思っていませんでした。
衝撃「新幹線と異なること」 街では「普通にあった」ことによる油断
新幹線のようにワゴンでやって来た車内販売へ、新幹線でのように、私は言ったのです。
「Beer Please」
ありませんでした。売り切れではなく、もともとアルコールの扱い自体が。
たとえるなら、車内販売で駅弁を買おうと思っていたのに、なくて、お菓子ですますようなものでしょうか。いや、それならお腹は一応ふくれますが、ビールがなくて水やコーヒーを飲んでもアルコールは摂取できないので、それ以上の悲しみと言えます。
残り591文字
この続きは有料会員登録をすると読むことができます。
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。