2度も原子力施設を爆撃したイスラエル 国際社会の反応が真逆になったのはなぜ?

イスラエルが全力回避した…かもしれない「先制自衛」と「先制的自衛」の議論

 また、1981年と2007年の両事例において、イスラエル側の行動が大きく異なったことも影響していそうです。

 1981年の事例では、イスラエルは自国の行動を「合法な自衛権の行使」と主張しましたが、2007年の事例ではそうした主張を一切せず、法的な問題については沈黙を貫いたのです。これについて、イスラエルは国際社会における「先制的自衛(pre-emptive self-defence)」に関する議論を呼び起こさないようにしたのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

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イスラエル航空宇宙軍のF-16戦闘機(画像:イスラエル航空宇宙軍)。

 国際法上、自衛権の行使には「一定の烈度を越える軍事攻撃である武力攻撃の発生」か、あるいは「現実の武力攻撃が発生する急迫した脅威の発生」が必要とされています。特に後者のような場合に行使される自衛権を「先制自衛(anticipatory self-defence)」と呼びますが、これと区別されるものとして、現実の武力攻撃の脅威はあるものの、それが急迫したものではないにも関わらず自衛権を行使する「先制的自衛」というものがあります。

 しかし、この「先制的自衛」に関しては、国際法上の合法性を疑問視する見方が多数派で、そのためイスラエルは、自国の行動を自衛権の行使と明言しないことによって、この先制的自衛との関連を国際社会において議論されないようにし、批判が巻き起こるのを回避しようとしたのではないか、と考えられるのです。

 いずれにせよ、2007年のシリアに対する行動に関して、イスラエルは確かに国際社会からの非難を回避しましたが、それはこの事例が極めて例外的な性質のものだったためであって、これを根拠に、たとえば国際法上の先制的自衛に関する評価を確定しようとするのは尚早といえるでしょう。

【了】

【写真】1981年「イラク原子炉爆撃事件」爆撃直前と直後の原子炉

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行い、商業誌への掲載実績有り。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。

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