路線バスで都県境越えの最難関「山梨ルート」 東京からバスが通じる「水源の村」の事情

ひょっとしたら東京都だった? 山梨直通バスが走るワケ

 バスが直通する山梨県の丹波山村と小菅村は、東京との結びつきが強く、一時期は東京都への編入も検討されたほど。いまでも西多摩地区と合わせて「大多摩地区」とも呼ばれます。

 両村とも人口は1000人以下で、いずれも多摩川沿いにしか広い道路を開削できなかったために、路線バスは昔から東京方面への運行が中心でした。山梨県側へ抜けるルートには、小菅村から松姫峠、丹波山村からは柳沢峠と名うての難所が控えていることもあり、丹波山村から塩山市に向かうバス路線も、昭和40年代には廃止されています。

 また、山梨県側でバスから見える森のほとんどは、東京都の涵養林(かんようりん。水質を守るため保護されている森)として管理されています。丹波山村は3分の2、小菅村は3分の1にあたる面積が東京都の所有で、村内には東京都水道局の職員も常駐しています。

 小菅、丹波山両村と東京とのつながりは、昭和20年代に奥多摩町の前身のひとつである小河内村との合併と東京都への編入が真剣に議論されたほどです。当時は東京都が「県境を越えた合併は全国にその例を見ないほど難がある」との意向を示し構想は実現しませんでしたが、当時の判断次第では、バスの沿線はすべて東京都内だったかもしれません。

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小菅の湯に停まる富士急山梨バス。現在は富士急バス(2014年11月、宮武和多哉撮影)。

 なお、丹波山村から山梨県側のほかの地域へ向かうバスはありませんが、小菅村からはあります。2014(平成26)年には長大トンネルを含む「松姫峠バイパス」が完成し、小菅村と山梨県大月市を60分で結ぶバス路線も新たに開業しました。それまで大型バスが入れなかった山深い場所でのバイパス開通効果は大きく、高校進学には村外での下宿が必須だった地域も、スクールバスによる通学が可能になるなど、地域の生活は変わりつつあるそうです。

 筆者(宮武和多哉:旅行・乗り物ライター)はこの路線の開業翌々日に乗り合わせましたが、山深い橋の欄干で数匹のサルが顔を出し、地元の方が「見慣れないバス車両が来たからビックリしてるんだよ」と話していたのが印象的でした。

【地図】路線バス乗り継ぎ「東京~山梨ルート」

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コメント

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2件のコメント

  1. 山梨県って関東地方ではないけど、上野原市、大月市、都留市や富士五湖エリアなどは実質関東圏の一部のような雰囲気ですよね(道路や鉄道で例えると、中央自動車道やJR中央本線で笹子トンネルを境に別れているような感じ)。

    中でも丹波山村、小菅村は確かに東京都奥多摩町からの方が近く、雰囲気も奥多摩とそんなに変わらないし、将来的に奥多摩町に吸収合併とかもありそう…。ちなみにこの2村の電話番号の市外局番も山梨側ではなく東京側のものが使われていますね。
    同様に道志村は神奈川県相模原市に吸収合併とかもありそうだし、上野原市も神奈川県の一部でもおかしくないかと…

  2. 橋本は東京都じゃないんだが?
    画像2枚目、如何にも橋本駅が東京都であるかのような表示は誤解を招くと思うが。
    というかミスリードが目的か。