阪神電車の運転士 なぜ運転中に突然立ち上がるのか そのタイミングは? 理由を聞いた

阪神電車で「先頭車かぶりつき」をしていると、運転士が突然、立ち上がりました。異常事態が発生したのかと思いきやすぐ着席、運転を継続しています。一定のタイミングで見られるこの行動は何でしょうか。阪神電車に聞きました。

阪神電車と直通する山陽電車でも見られる

 運転席の真後ろから運転士と同じ景色を見る「先頭車かぶりつき」は、いくつになっても楽しいものです。線路の様子や対向列車、運転士の所作を見るなど……。

 以前、筆者(西上いつき:鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表)が阪神甲子園球場に行ったときのことです。試合終了後、甲子園駅(兵庫県西宮市)から臨時特急の先頭に乗り前を見ていると、発車後しばらくして、運転士が急にガタッと立ち上がりました。「何か異常事態でもあったのだろうか」と思いましたが、特に何もなさそうで直後に着席。しばらくするとまた立ち上がり、そして着席……。いったいこの動きは何だったのでしょうか。

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阪神電鉄の8000系電車(画像:写真AC)。

 実はこれは、阪神電車の運転士が前方に「注意信号(黄)」を確認したときにとる、注意喚起のための動作です。注意信号は基本的に、その先の信号機が「警戒信号(黄がふたつ)」もしくは「停止信号(赤)」のときに点灯し、その信号機の奥に先行列車がいることを知らせています。

 そのため、注意信号を確認したら、列車は制限速度以下まで減速する必要があり、それにあわせて運転士はブレーキ操作を行わなければなりません。

 起立と着席の理由について阪神電車の運輸部に問い合わせたところ、「ヒューマンエラーを防ぐための意識づけである」とのことです。指差喚呼(称呼)はどの鉄道でも一般的ですが、体全体を使った確認方法はなかなか珍しいものですね。ちなみにこの動作は、直通する山陽電車でも見ることができます。

【了】

【写真】加速度最強クラスの阪神「ジェットカー」最新車両

Writer: 西上いつき(鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表)

大阪府出身。大学卒業後、名古屋鉄道にて運転士・指令員として鉄道運行に携わる。退職後、シンガポールの外資系企業にて国際ビジネスに従事。帰国後は東京を拠点として活動し2019年にIY Railroad Consulting設立、コンサルティング・セミナー・海外向け鉄道関連事業等を行う。東京交通短期大学・特別講師。著書に『電車を運転する技術』。

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コメント

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4件のコメント

  1. 前運転手に聞いたことがあるけど。国鉄の人。
    区間が長くなると、眠いんだって。
    教えないげど、やるそう。
    駅では、客や同僚がいるからやらないそう。

  2. レトロな意識ずけ行為ですね、保安装置が古いのか?入替運転では起立運転してたけど、今時の電車は運転席で立てないですよ。

  3. むかし京急が旧1号線ATSだったころその確認スイッチ?を操作するために立っていたような?今は知らない。
    銀座線がウェイサイドシグナルだった頃、黄色球2つで立ち上がるのを見たことがあるが、全員なのか、常にそうしていたのかは知らない。

  4. 私も職場で常にムスコを起立させていますよ。