モーリシャスでの商船の原油流出に出動 海保「機動防除隊」 海洋汚染対策のプロ集団とは?

体力よりも知力や調整能力が要求されるプロ集団

 機動防除隊の規模は20名弱と決して大きくありませんが、彼らに求められているのは、防除資機材を操るだけでなく、専門家集団として関係各所にアドバイスすることです。その役割は海上保安庁内にとどまらず他省庁や地方自治体、民間会社などにもおよぶため、相手の要望を聞きだすコミュニケーション能力や、複数の相手とやりとりする調整折衝能力が重要になるといいます。

 体力以上に知力や人生経験がモノをいうことから、10年以上の経験を持つ海上保安官が配属されているそうで、なかには特殊救難隊OBや潜水士経験者も在籍しているそうです。また、海洋汚染に関する知識も表面的なものでは折衝相手を説得できないため、なかには国立大学の理工学部で学ぶ隊員もいるとか。

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油回収作業で指導助言を行う機動防除隊員(画像:海上保安庁)。

 海上保安庁というと、領海警備や水難救助などに注目が集まりがちです。実際、尖閣諸島周辺の領海警備や排他的経済水域の見回り、自然災害時の被災者救出などにスポットが当たることが多いですが、海上保安庁の任務には海上環境対策や災害対策なども含まれています。

 そのためのスペシャリストチームといえるのが機動防除隊であり、その規模は決して大きくないものの、担う役割は大きいものといえるでしょう。

 なお、商船三井によると8月12日(水)までに、「WAKASHIO」の船上に本船上に残っていた油はほぼ全量を回収できたと見られるそうです。今後は船外に流出した油の回収に努めるとしています。

【了】

【写真】赤い作業服はエリートの証「機動防除隊員」

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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