知事公約うけ埼玉で進む鉄道延伸の検討 その可能性と課題

大野元祐知事の公約を背景に進められている、埼玉県内の公共交通の更なる利便性向上策を検討するための有識者会議「公共交通の利便性向上検討会議」。その第2回検討会議が開催されました。埼玉の鉄道は、さらに広がるのか、それとも……。

この記事の目次

・5路線について延伸を検討 知事の公約背景に
・4点ある議論のポイントと現状
・埼玉高速鉄道
・東京12号線
・東京8号線
・日暮里・舎人ライナーと多摩都市モノレール
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5路線について延伸を検討 知事の公約背景に

 埼玉県は2020年9月15日(火)、埼玉県内の公共交通の更なる利便性向上策を検討するための有識者会議「公共交通の利便性向上検討会議」の第2回検討会議を開催しました。

 これは昨年8月に就任した大野元祐知事が公約に掲げた、埼玉県境まで来ている公共機関・幹線道路の延伸および県内交通困難地域のアクセス向上を目指す「あと数マイルプロジェクト」を受けて今年6月から行っているもので、どの路線を重点的に整備して延伸すべきかなどを検討し、今年度中に報告書を取りまとめる予定となっています。

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埼玉高速鉄道の2000系電車(右)。左は直通運転先である東京メトロ南北線の9000系電車(画像:写真AC)。

 今回の第2回検討会議では、県内を通る鉄道の利用状況と、新型コロナウイルス感染拡大後の鉄道の利用動向の変化をふまえて、延伸の検討が行われました。議題に上ったのは、埼玉高速鉄道、東京12号線(都営大江戸線)、東京8号線(有楽町線)、日暮里・舎人ライナー、多摩都市モノレールの5路線です。

4点ある議論のポイントと現状

 議論のポイントとしては、将来の人口・需要等を把握した上で、路線を延伸することによる整備効果をどのように捉えるべきか、整備効果に対して公共投資をどう考えていくべきか、沿線市町の政策と延伸の整合や延伸の課題の検討状況など、これまでの経緯等をどのように考慮すべきか、延伸の根元の状況など外的要因に対してどのようにアプローチしていけばよいかの4点が掲げられています。

 現時点では、これまでの経緯を確認した上で、取り組みの方向性を探る段階にあり、まだ具体的な方策は固まっていません。今回の記事ではまず、検討対象となる各路線の現状について確認したいと思います。

埼玉高速鉄道

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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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