「水素」で注目!? 実は一筋縄ではない 「旅客機の燃料」の奥深い歴史とは
現代の旅客機の燃料に至ったのはいつから?
1939(昭和14)年に初飛行したドイツ製「ハインケルHe-178」は、ターボジェットエンジンを搭載。このことから「近代ジェット機の元祖」と呼ばれています。
また「ハインケルHe-178」のほぼ同時期に初飛行したイタリアの「カプロニ・カンピーニN1」も、世界で最初に飛んだジェット機として同国で宣伝されましたが、こちらは少し異なった機構のエンジンを搭載しています。「カプロニ・カンピーニN1」のエンジンは、厳密には「レシプロ圧縮ジェットエンジン(ガスタービン・エンジンの圧縮機としてレシプロ・エンジンを使用)」という特殊なものではありますが、カテゴリとしてはガスタービン・エンジンである「ターボジェット・エンジン」を積んだ飛行機です。
その後ガスタービン・エンジンは現在に至るまで、旅客機に広く採用され、現在に至ります。
ハインケルHe-178を始めとして、超音速旅客機「コンコルド」などに使用された、ガスタービンの原点である「ターボジェット・エンジン」はもちろん、戦後初の純国産旅客機「YS-11」に代表される、排気の一部を推進力だけでなくプロペラを回す出力として使用する「ターボプロップ・エンジン」、そして、現在のジェット旅客機のほとんどに採用されている、タービンからの出力でジェットエンジンの前に配置したファンを回転させ、バイパスフローという空気の流れを発生させる「ターボファン・エンジン」、これらはいずれもガスタービン・エンジンの一種です。
ガスタービン・エンジンは先述のとおり、実は幅広い燃料に対応できますが、現在は軽量の灯油に添加物を加えた「ジェット燃料」を採用しています。
自動車においても、水素を燃料とするエンジンが開発されており、燃焼後は水となるため、排気ガスのないクリーンエンジンとして2035年までの更新が叫ばれています。先述のエアバスの「ZEROe」も、同年までの実用化を目指すとのこと。旅客機の分野のエンジン問題は、今後どうなるのでしょう。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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