「日本最北の離島」救うドクターヘリ どこも運航できない場合は? 新型コロナは別対応
ドクターヘリを呼べない! もしもの時に備えて
ドクターヘリを要請した時に、すでに他の要請で出動していたり、気象条件が悪く出動できなかったりする場合、まず北海道防災航空室に連絡を入れます。するとこの部署が北海道庁の防災航空センター、北海道警察、札幌市消防局の順に患者空輸が行えるか調整します。
しかしこの3機関でも対応できない場合は、北海道知事を通じて、海上保安庁や航空自衛隊、陸上自衛隊など国家機関の航空部隊に出動を要請し、患者搬送を支援してもらいます。
具体的には海上保安庁であれば千歳航空基地に所属する航空部隊、航空自衛隊であれば新千歳空港に隣接する千歳基地所在の千歳救難隊、陸上自衛隊ならば旭川駐屯地(旭川市)所在の第2師団第2飛行隊もしくはおよび丘珠駐屯地(札幌市)所在の北部方面航空隊などが出動します。
なお、新型コロナの感染患者が発生した場合は、ドクターヘリではなく最初から陸上自衛隊か海上保安庁のヘリ、もしくは海上保安庁の巡視船が搬送を担います。実際、利尻島で新型コロナウイルスの感染患者が出ましたが、その搬送は陸上自衛隊のヘリが行いました。
あくまでもドクターヘリやメディカルウイングは民間航空の範疇なので、天候や時間帯などで飛べない状況が生まれてしまいます。しかし、仮にそれらが運航できない場合を考慮して、関係各所は日夜備えています。
国内の過疎地では高度な治療を受けられる病院は近くにありません。そのため迅速な搬送が可能なドクターヘリの普及が求められます。しかし、過疎地であればあるほど、ドクターヘリの維持は難しく、逆に都市部は高度な治療を受けられる病院が至近にいくつもあるほか、ドクターヘリが複数配備されている場合があります。
バランスの取れた適正な医療というのは難しいものの、地方と都市部で命の重さに差があってはいけません。ドクターヘリだけでなくメディカルウイングのような固定翼機での患者搬送がさらに認知・普及し、筆者の地元にある礼文空港のように定期便の飛んでいない事実上休止中の空港であっても、緊急時には使用できるような特例措置があると、さらに助かる命が増えると考えます。
【了】
Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)
木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。
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