鉄道高架橋が事務所や住居に… 名古屋「南方貨物線」の奇景 国鉄の一大未成線
なれの果て? 「高架線付き」格安物件に
そして2004(平成16)年には、西名古屋港線が貨物線としての機能を維持したまま、名古屋臨海高速鉄道の旅客線・あおなみ線に生まれ変わりました。終点の金城ふ頭駅前にある「リニア・鉄道博物館」へ向かう子供達にとっては、色とりどりのコンテナも楽しいアトラクションに見えるのか、南方貨物線との合流点付近にある名古屋貨物ターミナル駅周辺では時折大きな歓声が上がります。
このように、他の線区が開通に漕ぎつけ、変貌を遂げるなかで、南方貨物線のみ開通が叶わず、了承が得られた場所は構造物ごと売り払われ、結果として未使用の高架線が住宅街に残ることになりました。しかし「高架線付き」という特殊な条件を抱えた土地であるため、その売却益はまったくの想定以下だったといいます。
一方でこの貨物線を建設できなかったことにより、東京方から名古屋貨物ターミナル駅に入る貨物列車は未だに「稲沢で方向転換・名古屋駅2回通過」という効率が悪い運用を余儀なくされ、貨物輸送そのものに影を落としていると言えるでしょう。
早く着工できていれば、騒音問題が早く着地点を見つけていれば、工事再開時にオイルショックがなければ――つくづく「間が悪かった」としか言いようがない南方貨物線のぶつ切りの高架線は、きょうも住宅街の中で余生を送っています。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
愛知環状鉄道の黒字は下駄を履かせた結果ではないでしょうね?
昨今の情勢では「山梨県駅」からそのあたりまで最長の未成線ができやしないかと危惧しています…