なぜ? 空自F-15改修計画が暗礁に 予算膨らみすぎ 中断も示唆…やらないとどうなるか

改修計画の継続可否「検討」 やめた場合に想定される危機

 岸防衛大臣は参議院の決算委員会で、アメリカ側と初期費用の減額交渉をしたうえで、F-15Jの能力向上事業について継続の可否を検討する必要があるとも述べています。

 前出のように、F-15JにはJASSMとLRASMの搭載も計画されているものの、JASSMとLRASMは南西諸島方面における防衛力強化策の柱と位置づけられているため、F-15Jの能力向上改修計画を中止することは、その柱を失うことを意味します。それだけでなく、日本の防空能力の弱体化につながる可能性もはらんでいるといえるでしょう。

 F-15J/DJのJ-MSIP機は搭載するレーダー警戒装置が3種類あるなど、生産時期によって微妙に仕様が異なっています。また防衛省は2004(平成16)年度から2016(平成28)年度にかけて、J-MSIP機にレーダーおよび電子戦システムの換装といった能力向上改修を行っていますが、少数にとどまっています。このためF-15J/DJの装備部隊には仕様の異なるJ-MSIP機が混在している状況であり、これが部隊運用だけでなく、修理や補給の面でも負担となっていました。

Large 210429 kaishu 03

拡大画像

能力向上改修を受けたF-15Jのイメージ。アメリカは改修機を「JSI」(Japanese Super Intercepter)という名称で呼んでいる(画像:ボーイング)。

 防衛省はF-15Jの能力向上改修によって、バラつきのあるF-15JのJ-MSIP機も仕様を統一して、部隊運用や修理、補給の負担を軽減することを構想していましたが、もしF-15Jの能力向上改修に関する事業が中止になると、航空自衛隊の負担軽減も不可能となります。

 F-15Jは、ステルス性能の面では周辺諸国の最新鋭戦闘機と比べて見劣りするものの、飛行性能や兵装搭載量などの面では、現在でもトップクラスの実力を備えており、能力向上改修を行えば、長期に渡って第一線で使用できる戦闘機です。改修事業の先行きは不透明ですが、メディアに報じられて問題になったから中止するのではなく、アメリカとの初期費用の減額交渉を粘り強く進め、かつ国民に情報をきちんと開示した上で、事業を継続すべきだと筆者は思います。

【了】

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

2件のコメント

  1. そろそろ、アメリカに本気でキレた方がいい。

  2. これ、予算よりも資材の枯渇が大問題なんじゃないですか? 
    自動車メーカーで話題になっている「TSMCが出荷を減らしている影響で車載チップがひっ迫し欧米および日韓で操業が滞っている」現象と軌を一にしているように思えます。