バッテリーも傘も自転車も使える電車の定期券 「定期券の機能拡張」進める東急の狙い

ある意味「東急らしい」定期券の付加価値向上施策

 沿線に大きな観光地や空港がある私鉄ならば、レジャーやインバウンドの回復、開発も大きな収入源になりますが、東急にはそれがありません。そのため東急は、定期券収入の回復へより力を入れる必要がある、そうせざるを得ないとも言えるでしょう(もちろん、通常きっぷの販売を増やすことなども重要ですが)。

 ただこれは、日常の利便性を高める方向で進化しようとしているわけで、それによって沿線の価値・魅力を向上させ、住む場所などとしてより選ばれる沿線になる、という狙いも東急にありそうです。

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首都圏およそ300ポートで使える「LUUP」(2021年5月11日、恵 知仁撮影)。

 東急は、鉄道を軸に都市開発を行い、様々なサービスを提供するという「私鉄のビジネスモデル」を象徴する会社のひとつです。そうして沿線に暮らす価値、「東急ブランド」を高め、発展してきました。沿線住民の日常から収益をあげてきました。

 そう考えると、追加料金による機能拡張的な定期券の付加価値向上施策は東急らしい展開かもしれません。

 2021年5月13日(木)、東急は2021年度の予想として、定期外収入は+19.9%、定期収入は+4.2%という数字を発表(2020年度との比較)。東急に限らず、コロナ禍によるライフスタイルの変化で定期券の売り上げは戻りにくいと考えられているなか、東急の「TuyTuy」や「DENTO」といった定期券の付加価値向上施策がどの程度の効果を発揮するか、注目されるところです。

 ちなみに、コロナ禍による定期券の販売減は、関東の大手私鉄で東急が最大。東急沿線は1人あたりの課税所得が全国平均の1.5倍、世帯主の最終学歴が大卒以上である割合が他社線より約10%高い67%であるなど、テレワークへの移行が比較的多く起こっていることが考えられます。これも東急らしい背景かもしれません。

【了】

【写真】3本も充電ケーブルがついている独特なモバイルバッテリー

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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1件のコメント

  1. それでも定期券の売り場を大きく減らすとか!販売チャンネルとしてはかなり比重を下げてはいるだろうが、通学定期は?